タレント豊富な日本代表の攻撃陣。現状のベストチョイスを福西崇史が探る「悩みどころは右ウイングバック。堂安律か伊東純也か......」
■なぜ久保建英はあまり使われないのか ――堂安選手と久保選手の組み合わせを挙げてもらいましたが、現状では久保選手の出場がかなり限定的になっているのは、もったいないなと感じている人も多いと思います。 福西 組み合わせの問題ですよね。今のシステムで久保の適正があるのはシャドーになります。ただ、アジア予選では相手がかなり引いてきて、中盤にはスペースがないので久保はどうしても得意なサイドへ流れていきます。 そうなると中でも仕事ができる堂安と組むしかない。これが伊東だった場合、彼もサイドで仕掛けたいので久保と使いたいエリアが被ってノッキングしてしまうし、守備能力的に久保をウイングバックという選択肢は現状ないですね。 ――そのシャドーの序列的にも現状は南野選手や鎌田選手のほうが上ですよね。 福西 守備面や周りとの連携面、左の三笘を生かすというところ、堂安から伊東に交代したときの組み合わせの問題など、色んな点から序列は南野や鎌田のほうが上になっていると思います。ただ、あれだけのクオリティを持った久保の出場が限定的になっているのは非常にもったいないのも確かです。 久保を生かしきれないのは、前回のカタールW杯から続いている日本の課題の一つだと思うし、森保監督も試行錯誤していますよね。 ■三笘薫と中村敬斗の共存という新たな武器 ――左ウイングバックは三笘選手がファーストチョイスですが、左シャドーは南野と鎌田の二人という選択肢があります。三笘選手との組み合わせでベターなのはどちらでしょうか? 福西 これも好みになってしまいますが、個人的には南野ですね。理由としては三笘がドリブルで仕掛けてくることは相手もわかっているので、なかなか飛び込まずに構えてくることが多くなっています。 そのときに、裏への抜け出しが上手い南野がシャドーに入ることによって相手の陣形にずれが生じたり、判断を迷わせたりすることで三笘の選択肢を増やせるからですね。 ――左の選択肢として、これまで同じポジションを争っていた中村敬斗との共存が可能になりました。 福西 これは非常に大きいですね。新たな武器を手に入れたと思います。先ほどの南野や鎌田は三笘を生かすプレーに長けていますが、二人が同時に出ることでどちらもドリブルで仕掛けられるので相手は対応にかなり困ると思います。オーストラリア戦も中村のドリブル突破から同点弾が生まれました。後半の疲れている時間帯にあの突破はかなり効果的でしたね。 今後、W杯本番を戦うことを想定すると、中村の成長によって攻撃的な武器が増えたことはとても大きいですね。中村を先発で使って、三笘をジョーカーとしても使えるし、二人を同時起用でより攻撃的な形な選択肢もできました。 ――今予選を通じて、攻撃の選択肢、カードの幅がより広がりましたね。 福西 本来は攻撃的な形だけではなく、強豪が相手になったときの形も試したいと思いますが、アジアではそれが難しいですよね。インドネシア戦、中国戦も日本の攻撃陣がどんな組み合わせ、コンビネーションで相手を圧倒するか注目してもらいたいと思います。 構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜