おならの不安、パンツで解決したい 家族相手に実験重ね、臭いだけでなく音の軽減にも成功
おならの音も臭いも軽減するー。そんな夢のようなパンツが誕生した。企画したのは課題解決アイテムを企画・販売する「Toride(トリデ)」(岡山市)。きっかけや開発苦労を聞いてみると、ある病気に悩む人たちの不安を解消したいという優しい気持ちにあふれていた。 【写真】音も臭いも軽減できる消臭パッドはこちら 「過敏性腸症候群(IBS)という病気をご存じですか?」。 パンツを企画したTorideの柳井孝文社長(42)が開口一番たずねてきた。IBSは、ストレスなどが原因で慢性的に便秘や下痢、腹痛を繰り返す病気だ。「便秘型」「下痢型」のほか、おならの症状に悩む「ガス型」がある。 実は柳井社長の身内に、このガス型に悩む人がいた。そういう人たちは学校や職場、公共交通機関といった長時間座る必要がある場所にいると、おならが出てしまわないかという不安を常に感じているという。 「知人から塾でおならをした小学生がいじめに遭ったという事例も聞きました。たかがおならと思われるかもしれませんが、周囲の目を気にする生活は想像以上につらいはず。そんな悩みを解決したいと考えました」と柳井社長は話す。 医療用品メーカーの「ダイヤ工業」(岡山市)と共同開発。動けない着座時に効果を発揮する商品にした。パンツは股の部分にポケットがあり、臭いを吸着する活性炭入りのパッドを挿入できる。パッドをおしりの割れ目にフィットさせることで、おならの音の原因となる肛門周辺の皮膚の振動を抑える効果もあるため、臭いも音も軽減することに成功した。 開発には1年を要した。パッドがフィットしなければ、音や臭いが漏れてしまう。パッドの位置やサイズ、活性炭の粒の大きさなど探るため、柳井社長と開発担当者は、ピザやポテトをたくさん食べた後、実際におならをして家族の反応を見るという実験を繰り返した。「家族にばれなかった時は『ミッションクリアです』とメッセージを送り、ともに喜びを分かち合った」と柳井社長は振り返る。 もちろん、しかるべき機関でも効果を調べている。一般財団法人カケンテストセンター(東京)の消臭性試験では、アンモニアガスなどのおならの臭いの3大成分を90%以上減少させていることが分かった。岡山県工業技術センターによる防音試験では、45デシベルのおならの音を25デシベルに抑えられているという結果が出た。柳井社長によると、25デシベルは「エアコンの音よりも小さいので、気づかれることはない」という。 2月から販売スタート。販売目標金額は30万円としていたが、予想を上回り、2月15日現在約80万円売れている。購入者のコメントには「おならが出やすい体質で、車の中などでしてしまうといつも家族から顰蹙(ひんしゅく)をかっています。届くのを楽しみにしています」「ちょうど今日会議中におならをしたくなって、これだ!と思い購入」などと書かれている。 IBSで悩んでいた身内にも試作段階でプレゼント。いつでもおならが出せる安心感からか、数カ月はいていたところ、症状が治まったという。「『おならが出たらどうしよう』という緊張やストレスが症状を悪化させていることもある」と柳井社長。「こういう病気があることを知ってほしい。もし、おならの音が聞こえても、気づかないふりをしてそっとしてあげてほしいなと思います」と話していた。 商品はクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で購入できる。