プラズマ乳酸菌にコロナやインフル抑制効果 自然免疫を活性化「夢のワクチン」開発に期待
キリンホールディングス(HD)と国立感染症研究所は18日、共同研究を進める同社の独自素材「プラズマ乳酸菌」について、人体に元来備わる自然免疫を活性化する働きがあり、経鼻接種によって新型コロナウイルスやインフルエンザへの感染防御効果があることを確認したと発表した。自然免疫は幅広いウイルスを排除する機能があり、将来的にあらゆる呼吸器系の感染症に対応できる「夢のワクチン」の開発につながることが期待されるという。 【表で見る】免疫力向上をうたった主な乳酸菌飲料 同社によると、自然免疫を活性化させるワクチンは世界でも実用化された事例はないという。 ■ウイルス最初から攻撃 従来型のワクチンは、予防したい感染症のウイルスなどを体内に入れ、異物として記憶させて免疫(獲得免疫)を作成。2度目以降の侵入時に攻撃、排除する仕組みだ。効果を発揮するのは予防対象のウイルスのみとなり、未知のウイルスや変異したウイルスなどには即座に対応できない。 一方、自然免疫は外部から侵入したウイルスを異物として認識し、最初から攻撃する。その対象も狭く限定されないため、ワクチンに活用できれば1回の接種であらゆる呼吸器の感染症に対応できるとされる。 キリンHDによると、プラズマ乳酸菌は免疫における司令塔「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」を活性化させ、免疫細胞全体が強化されるという。 ■鼻から接種が効果的 テストは動物を対象に実施。呼吸器感染症のウイルスは鼻腔周辺で増殖するといい、鼻からプラズマ乳酸菌を接種した場合が、最もpDCの活性化につながることが判明した。鼻腔細胞内のpDCの割合や抗ウイルス遺伝子の量が6時間後には急増した上、効果も24時間後まで維持されるなど、即効性と継続性を併せ持つことが分かった。 開発を目指すワクチンは感染予防を目的とするもので、感染症有事が発生した際は「(メインの)ワクチンが開発されるまでのつなぎ」(キリンHD担当者)の役割を想定。感染研の石井洋・エイズ研究センター第1研究グループ長は「ワクチンは新型コロナで言えば、既往歴がある人には予防効果が不十分な場合もある。ただ、免疫(機能)が元気な人なら十分な効果が得られるし、重症化リスクがあっても予防効果は期待できる」と説明した。 プラズマ乳酸菌の共同研究を巡っては、キリンHDと感染研によるワクチンの研究開発が3月、国の公募事業として採択された。(福田涼太郎)