自主防災定着に疑問符 根拠ない「大丈夫」危険 連載「豪雨災害から10年、あの日に得た教訓」③/兵庫・丹波市
◆「自助」意識養う 立地リスク把握を 3年前に「市防災マップ」を更新し、冊子を全戸配布した。どのページをめくっても、谷あいの自治会は「土砂災害特別警戒区域」のレッドゾーンだらけ。1級河川沿いの自治会は、想定最大規模の浸水深が「3・0m―5・0m」「5・0m以上」のゾーンが広く、市内に安全な場所はそう多くないことが分かる。 冊子の裏面には「わたしの、わが家の避難計画」欄を設けた。計画を作成することにより、自分自身であらかじめ、「いつ」「どこに」「どのように」避難するかを決めておき、いざというときの避難行動に役立ててもらう「自助」の取り組みだ。 市豪雨災害後の最も大きな災害は、市に初めて「大雨特別警報」が発令された2018年7月5―7日の西日本豪雨。山南町北和田で累加雨量が499ミリに達した。山が崩れ、氷上町横田で墓地が流れたほか、床上浸水30カ所、床下浸水136カ所の被害が出た。この災害の最大避難者数は、市全体で35世帯、67人だった。 昨年の盆の台風7号の大雨。青垣町で233㍉降り、高谷川が「避難判断水位」に到達し、柏原町新井地区、氷上町生郷・沼貫地区に「避難指示」が発令された。この時の避難者は42人。 市が避難を呼びかけても、なかなか避難所に足が向かない。リスクを受け止め、避難が習慣づいている人は少数だ。 市くらしの安全課の柴原洋平さんは「人数の多寡だけで防災への意識や関連は計れない」と言う。例えば、大雨で避難指示が発令されたとする。指示が出てしばらくしてひどく降り出し避難できなくなった。今、動くのはかえって危ないので2階に避難しよう。行かなくても大丈夫だろう―。いろんな状況、判断がある。柴原さんは「根拠に基づき自宅にとどまる判断はある。『避難しなくても大丈夫だろう』の正常性バイアスが働き、根拠なく避難しない意識は危険」と警鐘を鳴らす。 改めて自宅や関係各所の立地リスクを把握したい。同課が地域に呼ばれ、防災講話をする際に防災マップの持参を呼びかけても「どこにやったか分からない」と言われることがままある。マップは、市のウェブサイトで公開されている。5カ国語に対応。