神奈川県、増えるタイワンリスにAI活用 NTT東と害獣の鳴き声で生息範囲把握へ
樹木やケーブルをかじって被害を与え、生態系への影響も懸念される特定外来生物のタイワンリス(別名クリハラリス)。近年増殖が懸念される神奈川県で、NTT東日本神奈川事業部は鳴き声を人工知能(AI)で識別し、生息範囲を把握する取り組みに乗り出した。(共同通信=小島佳祐) 尾まで含めた体長が約40センチのタイワンリスは、脱走したペットなどが野生化し繁殖。農林業への被害や在来のリスと餌や巣の場所の取り合いになることが問題視されている。環境省が昨年全国の市区町村に実施したアンケートによると、これまでに神奈川の他、茨城、埼玉、東京、岐阜、静岡、大阪、兵庫、和歌山、長崎、熊本、大分の各都府県で存在が確認された。 神奈川県では鎌倉市や横浜市の周辺などで増殖。目撃情報が寄せられると、県の担当者が本当にタイワンリスがいるのかどうかを確認した上で、わなを仕掛けて駆除を試みており、事前に現地へ足を運ぶ調査の負担の重さが課題となっていた。
県から委託を受けたNTT東は今年2~3月、横浜市の自然公園にレコーダーを設置して音声を収集。タイワンリスや鳥の鳴き声、車両から出る音などを学習させたAIで分析した。 その結果、5地点で集めた音声データから選定した110件中、AIが鳴き声を検知できなかったのは11件だけだった。うち10件はレコーダーから遠く、人でも聞き逃し得る非常に小さな音だったといい、運用上、AIによる聞き逃しは問題にならないと結論付けた。 鳴き声が酷似している鳥とも高い精度で識別できていたという。同社は2024年度中に実用化を目指す方針で「今後も別の鳥獣害対策などへの適用も検討していきたい」としている。