今夏限りの背番号「20」 全国制覇の妹に交流試合での活躍誓う 国士舘
少しでも多くの選手に参加してもらおうと、ベンチ入りメンバーが例年の春夏の甲子園大会より2人増の20人となった2020年甲子園高校野球交流試合。第4日第2試合に登場する国士舘(東京)の背番号20、石渡健斗選手(3年)はこのチャンスをつかんだ一人。軟式野球の全国大会で優勝したことがある妹の美穂さん(東京・日大鶴ケ丘1年)は、兄が「聖地」で大暴れするのを心待ちにする。 美穂さんは2学年上の兄の影響もあって、小1で少年野球チーム入り。中学時代は軟式野球に心血を注いだ。守備より打撃が得意なのは兄譲り。負けず嫌いで、兄が本塁打を打つと「自分も打ちたい」と練習に力が入った。昨年は所属チームの副主将で全国大会を制覇。外野手として最優秀選手にも輝いた。 受験勉強に本腰を入れ始めた昨秋。美穂さんは野球ボール形のお守りを作って兄や同学年のメンバー計30人に渡した。しょっちゅう試合観戦に訪れ、応援していたからだ。 お守りの効果もあってか、国士舘は秋の都大会で優勝。今年1月にセンバツ出場が決まると、美穂さんはわがことのように喜んだ。2月には、ユニホームに似せたお守り30人分を夜なべして作った。 石渡選手は昨秋に右脚を負傷した影響もあり、センバツではベンチ入り18人には入れなかった。さらに大会は中止された。寮から戻ってきた兄とは、気を使って言葉を交わさなかった美穂さん。でも、小学生時代に「甲子園出場」と七夕の短冊につづった兄が落ち込んでいるのは痛いほどよくわかる。 早めの引退も脳裏をよぎったという石渡選手。思いとどまれたのは妹や家族の存在があったからだ。休校期間中は、兄妹2人で一緒にキャッチボールをしたり、体幹トレーニングの方法について教えあったりした。気を取り直した石渡選手は、最後の夏に向けて再び個人練習に没頭。センバツ交流試合の開催が明らかになると、打撃で猛アピールして念願の背番号を獲得した。 美穂さんは別の高校に進学し、野球部マネジャーとして甲子園への一歩を踏み出した。「次は私たちが甲子園に」と対抗心を隠さない。それでも「最高の場所で、笑顔で野球を楽しんでほしい」と甲子園のスタンドから兄の雄姿を見守るつもりだ。「これまでいつも応援してくれた妹に、甲子園でヒットを打つ姿を見せたい」と意気込む石渡選手。妹のお守りをカバンにぶら下げて甲子園に乗り込む。【川村咲平】