秒間48コマ 映画の「映像革命」 『ホビット 竜に奪われた王国』を撮影したハイ・フレーム・レート3D
映画「ニュー・シネマ・パラダイス」に、フィルムが燃えて映写室が火事になる有名なシーンがある。しかし最近の映画館では、もうあり得ない話なのだという。全国の大きな映画館ではフィルムによる映写ではなくデジタル化が進んでいるからだ。このデジタル化に絡み、映画界ではさらに新しい試みが始まっている。フィルム時代から長らく続いた「1秒間24コマ」の撮影を「1秒間48コマ」で行うものだ。2月28日から公開された「ホビット」シリーズの第2部「ホビット 竜に奪われた王国」は前作同様、この秒間48コマの最先端技術「ハイ・フレーム・レート3D」によって撮影された。 「ホビット」配給元のワーナー・ブラザース映画、制作室マネージャーの松崎忍さんに、この「映像革命」の意義について聞いた。
1秒間に表示される画像の数が倍に
「ホビット」シリーズで取り組んでいる撮影技術ハイ・フレーム・レート3D(High Frame Rates=HFR)は、まだ日本でも全国50館でしか上映する設備がないほどの先端技術だ。HFRを上映するには、最新型のデジタル・シネマ・プロジェクターでないとできない。 映画界では100年近く、1秒間24コマによる撮影が常識となっていた。秒間24コマとは、簡単にいうと、1秒間に24種類の絵が表示されるということで、パラパラ漫画をイメージすると分かりやすいかもしれない。今回のHFRはこれが秒間48コマになる。つまり今までの倍のコマ数になるということだ。これにより、これまでの映画に特有の「ちらつき」が少なくなり、映像の動きがより滑らかになるという。 松崎さんは「1コマを短くしていかない限り、人間にはチラチラしたものが見えてしまう。24コマだとビデオ(秒間60コマ)に比べるとフリッカーを感じる人も多い」という。少し技術的な話をすると、48コマHFRによる3Dの場合は、右目用と左目用にそれぞれ48枚の画像があるので秒間96枚の絵が表示されていることになる。 これによって、従来の24コマでは実現できなかったスムーズなアクションシーンやデジタルシネマが不得意としていたカメラの横移動(いわゆるパン)の際の映像のカクつきが軽減された。松崎さんは「今回のホビットでいうと、その効果は川下りのオークとの激闘シーンに一番良く現れている」と手応えを語る。