「旅館・ホテル」の8割超で設備投資計画 『あり』平均投資額は約2億円
2024年度の設備投資に関する企業の意識調査 -業種・雇用過不足別分析
財務省が2024年6月3日に発表した法人企業統計調査(2024年1-3月期)によると、金融業と保険業を除く全産業の設備投資額は、前年同期比6.8%増となった。 帝国データバンクが調査した2024年度(2024年4月~2025年3月)に設備投資を実施する予定(計画)がある企業は、58.7%と前回調査(2023年4月調査)から1.8ポイント低下し、4年ぶりに前年を下回った。企業は設備投資の必要性を感じつつも、資材価格の高騰や人手不足、金利の上昇などを理由に建設、機械メーカーをはじめ幅広い業界で値上げや納期の延長がみられるため、設備投資を先送り、計画を見直す動きがある。また、2024年度は人的投資の拡大を重視し、あえて設備投資を実施しない企業もあった。 その一方で、積極的に設備投資を計画する業種もある。 2024年度に設備投資の予定(計画)が『ある』企業の割合を業種別にみると、「旅館・ホテル」は82.4%で8割超となり、全業種平均を23.7ポイント上回った。企業からは「コロナ禍も終わったため、以前から計画していた高付加価値化の投資を実施予定。政府からの補助金も活用する」(旅館・ホテル、愛媛県)といった声がある一方で、「ホテルは設備にかかる費用が大きく、好調期でないと投資が難しい」(同、東京都)といった声が寄せられた。なお、「旅館・ホテル」の設備投資予定額は、平均で1億9,454万円と約2億円にのぼり、全体平均(1億2,705万円)を、6,700万円あまり上回った。 設備投資の予定(計画)が『ある』企業の割合を正社員の雇用過不足別にみると、人手が「不足」している企業は65.3%となった。他方、人手が「適正」な企業は53.9%、「過剰」な企業は52.1%だった。とりわけ、投資内容をみるとITやDXなどの「デジタル投資」は、人手が「不足」している企業では40.4%と4割を超えた一方で、人手が「過剰」な企業では31.7%だった。 人手が「不足」している企業の方が、人手が「適正」「過剰」な企業より、人手不足への対応や、業務改善を目的とした省力化投資、AIなどを含むデジタル投資関連を計画している実態が明らかになった。 企業からも「人員不足を補う自動化・省力化に向けた設備投資を行う」(医療・福祉・保健衛生)といった前向きな声があがっている。
好調業界や人手不足が顕著な企業で積極的な投資が見込まれる
本分析の結果、2024年度の設備投資計画が『ある』企業について、製造業関連の業種が上位に並ぶなか、「旅館・ホテル」が唯一8割を超えた。インバウンド需要を中心に好調な業界環境を反映した結果と言える。 そのほか、人手が不足する企業を中心に、“自動化”をキーワードに省力化・省人化に資する投資を積極的に推進している様子も表れた。 2024年度の設備投資の状況は、先行きが見通せないことや、資材高、人手不足などを反映して投資計画の見直しを行うなど慎重な姿勢の企業が増えるなか、手元資金のある好調な業界や人手不足が顕著な企業では積極的な投資が見込まれる。