止まらない気温上昇で高まる、子どもの健康リスク
乳幼児特有の健康課題
もうひとつの重大な課題は、乳児および幼児は大人のように体温の変化に対応できないことです。これは未熟児にとってはさらに深刻な問題です。 「乳児は、私たちのように体温調節ができません。私たちは呼吸を速め、汗をかくことができますが、新生児にはそれができないのです。汗腺の構造がまだ未熟であるため、汗をかいて体を冷やすことができないだけでなく、腎不全などの臓器不全を引き起こしてしまいます」 また、乳児の呼吸は大人よりも速いため、公害の影響を特に受けやすい、と同氏は付け加えました。 「つまり、山火事や化石燃料の燃焼などの有害な空気を2倍の速さで吸うことになるのです。新生児の肺にそのようなことをすれば、生涯にわたる影響を及ぼすことになります。妊娠中の母親が汚染された空気を吸うと、胎内で子どもの脳も影響を受けるという研究結果も出ています。そこから回復することはできないのです」 ■子どもたちの生活へのより大きな影響 より頻繁かつ深刻な自然災害は、緊急かつ長期的な健康上の様々な課題をもたらします。 ファン・デル・ヘイデン氏はまた、食糧生産および疾病の蔓延など、気候が引き起こす事象の結果として、子どもたちの生存、成長、発達に広く影響を与える要因についても指摘しています。 「特に熱波との関連は証明されていませんが、子どもたちに特有の影響をいくつか付け加えさせてください。熱波や干ばつによって農作物の収量が落ちていることは、もちろんわかっています。アフリカの主食作物を見てみると、地域や作物にもよりますが、平均して30%から50%も収穫量が減少しています」 「次に、アフリカで若者世代が増加している状況を想像してみてください。実際、若い人たちが急増しています。人生の最初の5年間に十分な栄養素を摂取できないと、科学的に『発育阻害』と呼ばれる状態になります。発育阻害は、生涯回復できない認知障害を意味します。今現在の問題として、エチオピアにすでに発育阻害が40%を占める地域があることが挙げられます」 気候パターンの変化は、マラリアやデング熱のような病気の蔓延の一因にもなっていると同氏は述べています。 「降雨量が多いタイプの洪水では、コレラや下痢だけでなく、マラリアやジカ熱、デング熱まで、感染症とベクター媒介疾患の両方が増加します」 「10年前は、デング熱の感染者は50万人でしたが、今では520万人になっています。そして、繰り返しになりますが、気候変動に伴う世界的な健康負荷の88%は、5歳未満の子どもたちであり、こうした子どもたちは、気候変動の原因を作ったわけでもないのに生涯に及ぶ影響を受けるのです。これを理解している人はほとんどいません」