あなたはいくつ知ってた?猫の糞コーヒーから木に生える象牙まで。7つの天然素材を巡る奇妙な冒険、ほか新たな発見満載の5冊
今月は新年度に向けて読みたい本をセレクトしました。新たな発見が満載の5冊です。
明治のイノベーター
福澤諭吉の生涯をたどる評伝小説だ。それにしても、表紙の福澤の写真に引きつけられる。自信と希望に満ちあふれた表情だ。この顔を見れば、咸臨丸に乗船して渡米することを多くの人が尻込みする中で、「わがはいはほんとうにこわいと思わなかった。なぜなら、西洋文明の力を絶対的に信じていたし、本心はアメリカの文明をこの目で見たかったからだ」と言いそうな感じがする。明治のイノベーターの言葉や行動は今読んでも瑞々しい。
知られざる資源
自然の恵みを人間が「不自然」に享受している現場を訪ねる。その恵みの内容が面白い。(1)「アイダーダウン」=ケワタガモの羽毛、(2)「アナツバメの巣」=食べられる鳥の巣、(3)「シベットコーヒー」=ジャコウネコが排泄したコーヒー豆、(4)「シーシルク」=二枚貝シシリアタイラギの足糸、(5)「ビクーニャの毛」=ラクダ科動物の高級ウール、(6)「タグア(木に生える象牙)」=ゾウゲヤシの種子、(7)「グアノ」=有機肥料になる鳥糞石。皆さんはいくつご存知だろうか?
イノベーションの行方
「シリコンバレー」のイメージが覆された。この街はイノベーターやスタンフォード大学だけではなく、軍や官僚も大きく関わっているのだ。一例を紹介すると、「メイド・イン・ジャパン」の章で記述されるソニーの「ウォークマン」などにより日本の攻勢にさらされる中で、国防高等研究計画局(DARPA)が1982年に打ち出したのが「1990年代のためのマイクロエレクトロニクスから人工知能に到るスーパーコンピューターの防衛プログラム」。これにより次世代の技術開発に向けてMITなどの大学に大規模な資金が集中投下され、「インターネット時代のイノベーションの種苗」となったのだ。
芝生の上の人間劇
ゴルフは「メンタルのスポーツ」である。だからこそ出てしまう人間性を見事に描ききっているのが本書だ。負けず嫌いの社長がやってしまう悪い癖、ダメだと分かっているのに「卵を生む」ことを止められない社長……。こんな人、本当にいるのかとも思うが、バンカーとして長年日本の企業社会を見てきた筆者のことだ。こんな現場に遭遇したことがあるのかもしれない。そんな理不尽な場面に直面した時にどんな立ち振る舞いをするべきか、そのヒントも与えてくれる。
密航から始まる時代の記録
日本と朝鮮、さらには北と南の間に境界線が引かれた朝鮮半島を、正式に、あるいは密航により渡った尹紫遠とその家族の人生を追ったノンフィクションである。その移動の様子や、第二次世界大戦の混乱により離ればなれになってしまった家族の話、また日本で開業した洗濯店の話は、尹が出版した書籍やその仕事の合間に書かれた日記から紡がれる。尹の子どもたちの話も興味深く、当時の民族問題や性的役割、時代によって移り変わる戸籍や帰化の状況も垣間見える。
WEDGE編集部
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