《凄腕のベテラン「麻薬探知犬」》メルバを一日密着撮!成田空港や羽田空港の東京税関で活躍中!!
可愛らしい表情とは打って変わって、現場に出向くと鋭い眼光でパトロールをする麻薬探知犬の『メルバ』。″スーパードッグ″と呼ばれるベテランは、人知れず日本の安全を守っていた――。 【画像】凄腕のベテラン「麻薬探知犬」メルバの1日密着写真…!(写真10枚) 昨年の日本の税関における不正薬物押収量は約2.4トンで、極めて深刻な状況にある。そんな状況下で奮闘しているのは、メルバのような全国の税関に配備されている約130頭の″麻薬探知犬″。人間の数万倍の嗅覚を活かし、大麻や覚醒剤など不正薬物の匂いを探知。それを、″ハンドラー″(ペアの税関職員)に知らせる働きをする。麻薬探知犬は、海外から空港や港に到着する貨物や旅客の携帯品、国際郵便物を捜査し、不正薬物の密輸を阻止する重要な任務を負っているのだ。 「私たちは麻薬探知犬の候補となる″訓練犬″として、全国のブリーダーや訓練所などから、生後1歳くらいの犬を公募により集めます。さらに国内だけでなく、麻薬探知犬に適した犬同士の交配を進めているオーストラリア国境警備隊(税関)に依頼し、年間約10頭の犬を輸入しています」(東京税関監視部麻薬探知犬訓練センター室・担当者) 訓練犬たちは約4ヵ月間の厳しいトレーニングに励み、中間試験・最終試験を受験。合格率30%の狭き門を突破した犬だけが、麻薬探知犬として認定される。 ◆凄腕「麻薬探知犬」が活躍 全国で活動する麻薬探知犬の中でも、歴史に残る大活躍を成し遂げたのが、今年で麻薬探知犬歴8年目のメルバだ。 ’19年2月、モントリオール(カナダ)から成田空港に到着した旅客のスーツケース2個から、約30㎏(18億円相当)の覚醒剤を発見した。覚醒剤は30個の小袋に分けられ、衣服の中に巧妙に隠されていたが、メルバは逃さなかった。 「航空旅客からの約30㎏にもおよぶ摘発は、日本の歴史上で最大量。メルバは過去最大の密輸を事前に阻止し、大手柄をあげたんです。税関では平成28年以降、8年連続で1トン超の不正薬物が押収されていますが、麻薬探知犬たちの活躍なしでは語れません」(同前) メルバは今年8歳になった雌(めす)のラブラドール・レトリバー。’17年に麻薬探知犬に認定されて以降、成田空港や羽田空港を中心に活動している。メルバとペアを組んで3年目で、3代目となる現在のハンドラーがインタビューに応えてくれた。 「ラブラドールは飼い主に依存しやすい犬種といわれていますが、メルバはどんな人がリードを持っても操作しやすいのが特徴です。捜査になると私の補助なしで、自ら捜査対象貨物の隙間に鼻を突っ込むほど作業意欲が高い。不正薬物の匂いを感じ取れば、指示がなくてもその匂いの源まで追いかけて見つけ出しますよ」 ◆実際の仕事ぶりを拝見! メルバの稼働日は、ハンドラーと同じ約週5勤務。一日のスケジュールは働く人間とほぼ変わらないという。 「メルバは普段犬舎で過ごしていて、だいたい朝8時過ぎの散歩から一日が始まります。毛並みや健康状態のチェックをし、9時頃から業務開始。ご飯は基本、仕事が終わった夕方に1回。それが仕事終了の合図になりますね」 麻薬探知犬の仕事は集中力が必要であることから、10~20分程度の捜査を休憩や訓練と織り交ぜて実施する。この日も空港に溢(あふ)れ返った海外渡航者の間を縫うように歩き、不正薬物の匂いを嗅ぎ回っていた。日々のトレーニングはいったいどんなことをしているのだろうか。 「まず、不正薬物の匂いがしない段ボール箱を並べ、その周りをメルバにチェックさせます。そしてその場を離れさせ、今度は不正薬物の匂いがする段ボール箱を紛れ込ませて発見させる、というトレーニングを繰り返すんです。見つけられたら、ご褒美(ほうび)として″ダミー″と呼ばれるタオルを丸めたモノを与え、メルバの大好きな″綱引き″をして遊びます! 不正薬物を発見したらご褒美で遊んでもらえるということを学び、それがモチベーションになっているんだと思います」 実際に披露してくれたトレーニングでも、メルバは不正薬物を発見。ハンドラーは、必要以上に高い声で、『Good boy! Good boy!』と喝采した。 「メルバは高い声で声をかけると気合が入るので、褒(ほ)める時に心掛けています。高い声で『メルちゃーん!』と呼ぶと、『捜査なんだ!』と感じ取り、仕事モードになってくれますね」 そんなメルバも人間ならおよそ60歳になる。加齢を理由に年内での引退が発表され、引退後はメルバの初代ハンドラーに引き取られる予定だという。 引退まであと5ヵ月――。日本の安全を守るため、メルバは最後の瞬間まで、不正薬物の匂いを追い続ける。 『FRIDAY』2024年7月19日号より
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