アメリカ大統領の任期を2期8年に決めた「総入れ歯」の事情
トランプ氏の勝利が世界中に衝撃を与えた米国大統領選挙。2期8年務めた現職オバマ大統領の任期は来年2017年1月20日で終わるわけですが、米国大統領は2期までと決まっています。なぜ2期まで、と決まっているのでしょうか。
初代大統領の慣例踏襲 例外はフランクリン・ルーズベルトの4選
大統領の任期はアメリカ合衆国憲法第2条第1節の規定で、4年に1度国民の投票によって新しく選出、または再任されるとなっています。また2度を超えて選出されることを認めていません。 もともと、米国大統領の任期は、初代大統領ジョージ・ワシントンが、1789年から1797年の2期8年務めたことが慣例になりました。その後、暗殺された第16代リンカーン大統領のように、途中で大統領が亡くなることがあっても2期までの慣例は続き、ジョージ・ワシントンが退いた3月4日が新大統領就任の日になってきました。 ただし、その慣例を破った大統領がいます。1933年3月4日、第32代大統領に就任したフランクリン・ルーズベルトは、第2次世界大戦の有事を理由に、2期後の40年、44年の大統領選に立候補し、唯一4選を果たした米国大統領となりました(4期目在任中に死亡)。しかしその後、1951年に成立した合衆国憲法修正第22条第1節で正式に2期までの任期制限を決まりました。 ちなみにフランクリン・ルーズベルト大統領のときに、大統領の就任宣誓も憲法で3月4日から、選挙翌年の1月20日正午(米国東部標準時)に改められ、それが現在に続いています。
大統領演説を嫌ったワシントン その理由は……
こうして初代大統領のジョージ・ワシントンの慣例が、実際に憲法として残る米国ですが、ワシントンはなぜ大統領職を2期で退いたのでしょうか。 ワシントンが大統領に就いた時、支持者には永久の統治者にしようという動きもありましたが、独立戦争で活躍し、アメリカ建国に関わったほかの立役者たちと同様、そうした地位をつくることを望まなかったと言われています。実際に2期目就任も高齢を理由に辞任しようとした話が残っています。 また、ワシントンは演説を嫌がったことで知られています。実はワシントンは天然痘にかかり、その治療薬の副作用で若いときから、常に歯に悩みを抱えていたとみられています。大統領就任時には総入れ歯を使っていましたが、当時の義歯は象牙やカバの牙を加工したもの。米国の1ドル紙幣に描かれたワシントンの口元も苦痛に耐える表情と見て取れる、といわれています。 来年1月20日は、トランプ氏が第45代大統領に就くことが決まり、認めない反トランプの市民の一部には、現職オバマ大統領の続投を求める声もありますが、ジョージ・ワシントンの“事情”により決まった2期という任期は、合衆国憲法となり、守られているのです。