『北斗の拳』もはやケンシロウにかなう敵なし…最後は何を描いて物語の幕を閉じたのか
世紀末救世主伝説はこうして完結した
「週刊少年ジャンプ」のバトルマンガといえば、次々と現れるライバルとの戦いを通じて相互理解を深めたり、試練を乗り越えて成長したりするのが王道の展開です。しかし『北斗の拳』では「カイオウ」以降、ライバルと呼べるようなキャラクターは登場せず、主人公「ケンシロウ」が苦戦することもありませんでした。「修羅の国」編以降の『北斗の拳』では何が語られたのでしょうか。 【画像】ケンシロウ最後の敵は担当編集…? こちらが最終回に描かれたそのご尊顔です ●次の世代に目を向ける 「修羅の国」編までにおいてケンシロウは、「北斗神拳」の伝承者として過去の因縁を断ち切り、全てに決着をつけました。これまでは常に挑戦者の立場でしたが、拳士として完成し、もはや敵無しです。以降、物語の中心にいたのは「ラオウ」の遺児「リュウ」や、物語の最初から登場している弟分「バット」でした。ケンシロウは主役ではなく、彼らを成長させる精神的な師、または兄としてのポジションで描かれています。
●リュウとの旅 北斗神拳にはケンシロウに続く伝承者がいません。それどころか、ケンシロウからは自身の師父である「リュウケン」のように、次の伝承者を育成しようという意志が感じられないのです。この点についてはバットも懸念していました。「元斗皇拳」の存続を気にしていた「ファルコ」とは対照的な姿勢だといえます。 そのようなケンシロウがラオウの遺児リュウをともなって旅をしたのは、北斗神拳伝承者として鍛えるため……ではありませんでした。ケンシロウはリュウに自分の生き様や戦いを見せるだけで、何も教えません。そもそもケンシロウは、甥っ子であるリュウを伝承者にするとひと言も言っていませんし、リュウも北斗神拳を学びたいと言っていません。旅の目的は別にあったのです。 ケンシロウとリュウの旅は、ラオウの残した「影」を巡る旅でした。かつて拳王軍の馬のエサ係だった「コウケツ」や、ラオウに憧れた「バラン」が人びとを苦しめていたからです。ケンシロウはラオウの残した悪しき「影」を打ち倒すことで、ラオウの目指したものや生き様をリュウに伝えます。リュウにとっては叔父の戦いを通じて父を知り、自分に流れる血を自覚する旅だったといえるでしょう。 リュウと別れた際に残した手紙に記したように、ケンシロウは旅を通じてリュウに哀しみを知る心を持ってほしかったのです。これは誇り高く強すぎたラオウにとって、認めることが難しかった感情です。