渡辺満里奈と友人関係「人付き合いが少々苦手で、実は友だちは少なめ。“ママ友”にもドキドキしていたら…?」
育児や家事、仕事などで時間に追われる毎日。さらに追い討ちをかけるのがホルモンバランスの変化や更年期などによる心身の乱れ。子どもは言うことを聞かないし、天気が悪いと体調を崩すし、SNSからはなんだか不穏なニュースが流れてくる……。残念ながらオトナの女性にとって「不機嫌」にならざるを得ないことが世の中には溢れています。 渡辺満里奈と家族のための料理「結婚して19年。なぜ今こんなにご飯を作ることに疲れてしまっているのか」 デビュー当時からずっと変わらないハッピーな雰囲気を纏い、タレントとして幅広くテレビやラジオで活躍中の渡辺満里奈さん。2005年にお笑い芸人の名倉潤さん(ネプチューン)と結婚。健やかに育った息子さんと娘さんは現在ともにティーンエージャーに。家事に仕事にと充実しつつも、忙しい毎日を送りながら、常に笑顔で幸せオーラで輝いて……。 そんなハッピーなイメージの満里奈さんも、50代に突入。実は私たちと同じで「不機嫌」だった!? オトナになるのは、誰もが初めてのこと。肉体的にも精神的にも初めて訪れる変化に不安を感じる女性たちにそっと寄り添い、一緒に闘ってくれる満里奈さんのエッセイ! 今回のテーマは「友人関係」。 大人になって家庭を持つと、どうしても家族が第一優先になり、なかなか友人との時間が作れなくなってしまうもの。意外や意外「友だちが少ない」という満里奈さんが出会った「同志」の存在とは?
友人関係と不機嫌
人とのコミュニケーションが少々苦手で友だちは少ないんです。と言うと、 「えー、またまた(笑)。全然そんなことないじゃないですか!」 と必ず言われます。仕事上、人とのスムーズな会話は必要不可欠ですし、滞りなく番組を進行するのが役割だったりするので、そうは見えないのは当然かと思います。でも……番組で接する方たちはお互いが同じ目的でそこに集まっています。全員プロなので、円滑な番組作りに関しては問題なく進みます。彼らは共演者または仕事仲間です。しかもバラエティー番組の場合は、決められた時間に終了するのであまりじっくりおしゃべりをするとか、その人の人となりを知るところまでいきません。なので、 「ごはん食べに(あるいは呑みに)行きましょうよ!」 とか、 「連絡先教えてくださいよー」 などそれ以上の交流はその人次第だったりして、私はそれがとても苦手でした。いつも太陽のように明るく、普通に楽しそうにいろんな人に話しかけることができる人を「素敵だなぁ」と眺めているような人間です。 「芸能人のお友だちはどんな方がいますか?」 と華麗なる交遊録を期待して聞かれると、申し訳ない気持ちになります。 相手がどんなことが好きで、何を考えて、何を大切にしているかなどなど、そんなことを話すにはなかなか時間がかかります。何から話していいかわからずに時間だけが過ぎて「気まずい……」と思うこともあったりして。若いころにはそのかける時間を蔑ろにしていたのかなと、歳を重ねた今思います。信頼できる人にはとことん甘えて自分をさらけ出すことができますが、どちらかというと内向的でずっと家にいたり、ひとりで映画を観たり本を読んだりするのが好きなほうなので、たくさんの人に自己開示をするよりもひとりの時間を多く選んでいたのでしょう。自信のなさからだったかもしれないし、自分勝手だったとも言えますね。 逆に言うと、人間関係に悩まされるということもないんです。悩むほど関わっていなかったのだろうと時々思い返します。それがいいのか悪いのかは今となってはわかりませんが、自分の非常にドライな面、欠けている部分を突き付けられているなと感じます。「来るもの拒まず去るもの追わず」というとかっこよく聞こえるかもしれないけど、もっとちゃんとかっこ悪くても追っていればよかったのかなと思うこともあります。そんなことと向き合って受け入れての今なのですが。 でも私のこの人間関係は、子どもができてから劇的に変わりました。いわゆる「ママ友」との出会いです。 「ママ友」という言葉にはずっと抵抗感がありました。私は「ママ」という人ではなく、ひとりの人間なのに。ざっくり束ねて「ママ友」と呼ばれることに居心地の悪さを感じていたのです。息子が初めてプレスクールに通うことになった2歳の時、他のお母さんたちと馴染めるのだろうか、いや、馴染まなくてもいいかな、マイペースでいいじゃないか!とドキドキ不安に思っていました。息子と同様、私も未知の新しい社会へと足を踏み入れたのです。 「ママ」といっても、当然のことながらいろんな人がいます。でもみんな我が子が初めてプレスクールに行く!ということは同じです。泣かないだろうか、お友だちと仲良く遊べるだろうか、お弁当はちゃんと食べられるだろうか。自立への第一歩を見届ける胸がきゅっと締めつけられるような気持ちはみんな同じで、マジックミラー越し(そのスクールはそういうシステムでした)に眺めては、隣の人と自然と目を合わせ笑い合うというような雰囲気は悪くありませんでした。 1ヵ月もすると名前を覚えたりして、社交的な人はランチに誘ったりするなど交流します。そう、そこにある前提は「同じ歳の子どもがいる」ということ。私の苦手なそれまでの経歴や仕事の説明などはひとまず置いておいて、誰もが子どもの話から入っていく。これか……これがママ友か! 慣れない子育てに奮闘してきて、夫婦と子どもという孤独だった日々にようやく出会えた同志。第2子、3子のお母さんは時々道しるべを掲げてくれる頼もしい先輩。でも同志。ママ友とは「誰々ちゃんのママ」同士ではなく、すぐに名前で呼び合うことのできる同志だったのです。 どんなに高級なところに住んでいるかとか、誰もが憧れる高級なバッグをしこたま買ったとか、ごくごくたまにマウントを取ってくる人に出会ったりするのですが、そういう人とは即距離を置く。子どもが小さい時ほど生まれた月によって成長が目に見えて違うけど、何ができるできないで焦ったりせず、他の子と比べない。噂話や悪口には乗らない。プライベートに踏み込みすぎない、など気をつけていれば気持ちよく、良好な関係が築けます。お迎えや急な仕事対応などの困ったときも助け合うことができる(甘え過ぎには気をつけます)。気が付くと、気の合う人とお付き合いする時間が長くなり、子どもが大きくなった今も付き合いは続いています。 幼稚園、小学校と子どもたちが接する社会は広くなっていき、そのたびにお友だちができました。夫は、 「子どもが自立してもママは友だちがたくさんいるから楽しそうだね」 と言います。そんなことを言われる日が私にくるなんて考えたこともありませんでした。感慨深い。特にプレスクール時代と小学校入学時に仲良くなった友だちは一生お付き合いしたいと思えるほど繋がりが強く、旅行なども行きます。「ママ友」を超えた友人は、不機嫌になりそうな私の気持ちをひょいっと持ち上げてくれる、最高に信頼できる大切な宝物になったのです。