「母は奴隷なのか」1週間泊まり込み勤務後“急死”、家事使用人の「労災不支給」めぐる裁判が結審 遺族ら思いを語る
控訴審が長期化した理由
控訴審は2023年1月から開始された。控訴審では「1回結審」と言われ、第1回期日で当事者の言い分を聞き弁論を終結することも多い中、本裁判では実に1年半にわたり審理が重ねられた。 結審後の会見で明石弁護士は、審理が長期化した要因について、「(高裁の)裁判官は業務起因性(業務と発症原因の因果関係)に興味を持っていた」と振り返る。 Aさんが亡くなった場所が低温サウナであったことから、国は急性心筋梗塞の要因がサウナによるものだったと主張。これに対し、明石弁護士は「サウナといってもAさんが亡くなったのは40℃ほどの低温サウナだった」と説明。国と原告側の双方の主張についてこう続けた。 「一審の際、国は『サウナで人が亡くなることもあり得る』と立証したかったのでしょうが、出してきた証拠はなぜか『和温療法』という体を温め病気を治す療法の説明だった。この和温療法は、重度の心不全の人を60℃ほどの部屋に入れて温めるというものです。60℃で人が亡くなるどころか心不全が治ると言っている。このことからも、40℃の低温サウナに入っていたAさんが急に亡くなるとは考えにくく、1週間休みなしで働かされたことによって心筋梗塞が生じたことは明らかだとわれわれは主張しました」 また、同代理人の指宿昭一弁護士は、控訴審の訴訟指揮を執った藤井聖悟裁判官が非常に熱心だったといい、「家事使用人だから労災不支給ではなく、きちんと連続長時間労働とその死亡との因果関係を検討していくという方向性を示してくれました」と話す。なお、今年4月に藤井裁判官は異動。現在は水野有子裁判官が裁判長として指揮を執っている。 裁判官が途中で変更になる影響について、指宿弁護士は「裁判官も人間なので影響がまったくないかと言われるとわかりません。ただ、今回の裁判は裁判官3人の合議体で審理が行われていますので、これまでも基本的な方向は確認しながら進めていたはずです。1人交代になったからといって全面的に判決の方向性が変わるものではないと私は思っています」と説明した。