人気マンガの『宇宙兄弟』アニメ化を実現した裏側とは
『宇宙兄弟』のアニメ化を講談社に提案を持ちかけたのは、永井さんが関心を持ってから2年ほど経った頃。他局に強奪される可能性もあったが、“青田買い”できない事情もあった。「使い捨てにはしたくなかった。ゴールデンに近い枠で戦える作品だと思ったから、大事にしたかった。日曜朝のアニメ枠でやるには、もったいないと思ったので。さらに年単位の放送回数を制作する為には、10巻くらい原作が必要になるので、2年くらい様子をみる必要があった」と、見守り続けた。 実際、提案したときでさえ、読売テレビ側の準備は揃っていなかった。「いつから放送を開始する、どの枠で放送する、制作会社はどこになる、などは決まっていなかった。ただ、全国ネットでやりたいと伝えたら、『お願いします』ということになって。他局からのアプローチもあったそうですが、運が良かったですね」と、強運があったという。結果として、当初は編成事情で日曜日朝の放送となったが、視聴者からの絶大な支持と関係者の熱い思いによって、放送開始から1年後、『宇宙兄弟』は土曜の夕方へ移動することになった。 今回、公開されるアニメ映画『宇宙兄弟#0』は、放送開始当初からあった構想だという。「映画を作ろうという話は最初からありました。だた、課題は内容。サイドエピソードを作るとか、途中までテレビアニメで放送して、最後を映画でという案もあったけど、僕は『宇宙兄弟』1話の前の話のほうが、興味があった。1話の前が知りたい、ということで#0になりました」と、同時進行でプロジェクトを進めていった。また、エピソード0は、テレビアニメのスタッフでストーリーを検討していくつもりだったが「自分たちでやって、どこまでやっても満足できない、何度も何度もボツにしましたね。小山さんには原作に注力してもらいたかったのですが、結局、お願いしてしまいました(笑)。さすが、よくぞここまでのストーリーにしてくれました」と、感謝しきりだ。 現時点で具体化されている『宇宙兄弟』のアニメーションは、『宇宙兄弟#0』で一旦、幕を閉じる。それでも、永井さんを含めスタッフ全員、“シーズン2”にむけ、動き出している。「次は約束できないけど、『次をやりたい』という気持ちは、僕も含め、みんな同じだし、社内でも話している。もちろん、視聴者も期待してくれている。その気持ちが切れないように、仕掛けていきたい」と永井さん。劇場で公開される『宇宙兄弟#0』、そして近い将来、新たな『宇宙兄弟』が、視聴者の知的好奇心を刺激してくれるだろう。