なぜアジア杯で中東勢は勝ち残れるのか。日本に足りなかったものとは? イラン戦後に“熱量の差”を指摘されたが...
森保ジャパンは曖昧だった
グループステージで日本に勝利したイラクは、ラウンド16でヨルダンに2-3で競り負けたが、日本相手には明確なカウンター、ヨルダン戦ではしっかりとパスを繋いで崩す戦い方を選択しており、ベースの高さを示していた。 どの国も戦術的なベースがしっかりしたうえで、試合のプランで自分たちのストロングと相手のウィークを掛け合わせて、勝つための戦い方を実行していく。その点で、森保ジャパンは曖昧だったと言わざるを得ない。 JFA(日本サッカー協会)の新たな試みとして始まった東大・筑波大院生ら25人による分析資料が代表のテクニカルスタッフに届き、それをミーティングなどで反映する体制で臨んだが、短い期間で現場のプランに活かされなければ意味がなくなってしまう。 その足枷になってしまったのが、カタールW杯から1つ進化して、アジアで圧倒できるチームを目ざしたことだろう。たとえば守備は1対1で守り切れることをベースに、前に人数をかけるスタイルを構築してきたが、イラク戦やイラン戦のような苦しい時間帯になったところで、うまく耐えて、また自分たちの時間帯に持ち込むようなプランが希薄になっていたように思う。 イラン戦後、アジアカップに対する“熱量の差”が指摘されるが、それは単なる気持ちの強さではなく、アジアカップという大会で勝つことに、どれだけ向き合っていたかということだ。 森保ジャパンの大きな目標として世界一を目ざすこと自体は悪くないが、たとえば世界一が目標なら、このぐらいはそのまま耐えて、自分たちの流れに持ち直さないといけないとか、目の前の相手を全力で叩きのめすことにベクトルが向いていなかったように思う。 そこがファイナルに勝ち残ったカタールやヨルダンはもちろん、惜しくも準決勝で敗れたイランも日本より上回っていた。日本はタレント力も総合力も、過去のどのチームより上だったかもしれないが、中東諸国、さらに言えば東南アジアなどのレベルも上がってきているなかで、目の前の大会に向き合う矢印の強さに差は感じられた。 それでも勝機が無かったわけではないが、ベスト8敗退という結果によって、気付かされたことが多いのは確かだ。 取材・文●河治良幸