“トヨタらしいSDV”の開発へ、NTTと5000億円かけてモビリティAI基盤を構築
モビリティAI基盤の構築を推進する背景に「SDV」の存在
トヨタ自動車がNTTとモビリティAI基盤の構築を推進する背景には、SDV(ソフトウェアディファインドビークル)の存在がある。 ソフトウェア定義型自動車などと訳され、従来よりもソフトウェアの果たす役割が大きくなるとされるSDVだが、佐藤氏が“トヨタらしいSDV”が提供する最も重要な価値として挙げるのが安全/安心である。「安全/安心はすなわち交通事故ゼロ社会に貢献することであり、それによって『全ての人に移動の自由をお届けする』という目標の達成にもつなげられる」(同氏)という。 SDVのプラットフォームとしては、車載OS「arene」に代表されるソフトウェアプラットフォームがあり、これに合わせて電子プラットフォームの刷新も進める考えだ。自動車としての物理的な基盤である車台と、これらソフトウェアと電子のプラットフォームが組み合わされる。 そして、SDVとしての機能進化で鍵を握るのがAIと通信を活用した自動運転技術である。日本国内での交通事故発生件数はADAS(先進運転支援システム)などの普及により10年間で半減しているものの、近年は減少の勢いが弱まりつつある。トヨタらしいSDVが重視する安全/安心を実現できている状況ではないことから、SDVの開発を2つのアプローチで進めている。 1つはデータドリブン開発だ。市場の走行データをAIが継続的に学習し、さらにはAIを活用してさまざまな運転シーンを生成したり、少ないデータで学習できるようにしたりしていく。それによって、シミュレーションの精度を上げ、スピーディーにソフトウェアを改良して、自動車の自律型制御の性能をさらに高める。 しかし、このような自動車単体の自律性能を高める形での自動運転技術には限界がある。そこで、もう1つのアプローチとなるのが、今回のモビリティAI基盤の開発目標にもなっている三位一体型のインフラ協調である。佐藤氏は「クルマがヒト、インフラ、他のクルマの情報を絶えず収集できれば、多くの事故に影響する死角を減らすことができる。それらの情報をAIが学習することで、人やクルマの動きを精度高く予測した運転支援も可能になる」と説明する。