韓国大統領が戒厳令、通貨や株式急落-市場に無制限の流動性供給へ
(ブルームバーグ): 韓国の尹錫悦大統領は3日、緊急の国民向けテレビ演説を行い、「非常戒厳」を宣布した。
尹大統領は、野党が弾劾の動きで政権を麻痺させようとしていると非難しつつ、この決定は自由と憲法秩序を守るために下されたと述べた。
尹氏は「自由民主主義の基盤となるべき国会が自由民主主義体制を崩壊させる怪物になった」と指摘。「韓国はすぐに崩壊してもおかしくないほどの風前の灯の運命に陥っている」と述べた。
聯合ニュースによると、非常戒厳下で全ての政治活動は禁止され、メディアは戒厳司令官の統制を受けることになる。
金融市場では、非常戒厳の宣布を受けて韓国ウォンが急落し、対ドルで約2年ぶりの安値。韓国の株式で構成されるiシェアーズMSCI韓国ETF(ティッカー:EWY)は米国市場で一時7%下落した。韓国企業の米国預託証券(ADR)も軒並み売られ、ソフトバンクグループが出資する韓国の電子商取引会社クーパンは一時9.8%安、KBファイナンシャル・グループは6.4%安、鉄鋼メーカーのポスコ・ホールディングスは7.8%安を付けた。
ロンドン市場に上場するサムスン電子の株価は一時7.5%安。
これに対し、韓国当局は金融・為替市場を安定させるためあらゆる可能な措置をとると表明。必要であれば市場に無制限の流動性を供給する意向を示した。崔相穆・企画財政相と李昌鏞・韓国銀行(中銀)総裁は深夜に緊急会合を行った。市場に対する詳細な措置は、4日朝に発表するという。
韓国のケーブルテレビ、YTNによると、4日の同国株式市場が開場するかは不明という。
為替市場では一方で円を買う動きが強まり、円は対ドルで一時148円台に上昇した。
聯合によると、韓国国防相は軍最高司令官らとの会合を行う。
非常戒厳の宣布に先立ち、少数与党の尹政権と最大野党の共に民主党との間で数カ月にわたり争いが継続。野党側は独自の予算案を議会で強行可決に持ち込もうとし、検事総長の弾劾決議案を提出していた。一方、野党党首も複数の訴訟に直面し、先月には選挙法違反で有罪判決を受けた。