買うべきか、買わざるべきか…心動く「本居宣長の木製栞」 「古書目録」を眺める楽しさ
【花田紀凱 天下の暴論プラス】 「古書目録」を眺めるのが好きだ。 あちこちの古書会が、今も目録を送ってくださるのは、有難く、嬉しい。疲れて帰宅しても、ついついチェックしてしまう。 今はネットでも「日本の古本屋」などがあり、検索して探せば便利だし、写真も掲載されているから、本や雑誌の状態もわかる。 けれど、目録を1ページ1ページめくっていく楽しさはない。 一昨日届いたのは「新興古書大即売展略目」。6月21、22日に東京古書会館で開かれる会の目録だ。 成増のフロイス堂、目黒の九蓬書店、早稲田の五十嵐書店など9店が加盟。B5判126ページの立派な目録だ。 だいたいが、江戸時代から明治へかけての書画が中心のこの会だが、短冊や書簡、書幅など眺めているのも楽しい。浮世絵など、カラーでないのは残念だが、これはコストの関係でしかたあるまい。 今回、眺めていて気になったのは九蓬書店さんが出している「永井荷風草稿」。 一枚の紙に毛筆19行。「風流小道具所開店披露口上」で、22万円。 フロイス堂さんが出している「本居宣長 和歌 木製栞」。 「分見はや しをりも花のよしの山 なほおく深く にほふこすゑを」 宣長自筆の和歌が木製の栞に書いてあるのだ。 江戸中後期作で、「津藩士駒田家旧蔵」と注がある。10万円。 これはちょっと心が動いた。 今、少しずつ平川祐弘さんの全集を読んでいるのだが、読みかけの途中にこの栞を置いたら、気持ちがいいだろう。 「なほおく深く」理解できるかもしれない。 あと、浅倉屋書店さんの「尾崎一雄書簡」便せん7枚。 宛先が目に飛び込んできた。 なんと、山崎剛平氏宛なのだ。 早稲田国文科卒で尾崎さんの盟友。一緒に同人誌を出し、後には「砂子屋書房」という小さな出版社をつくって、尾崎さんの『暢気眼鏡』、太宰治の第一小説集『晩年』などを出版した。 尾崎さんのエッセイにもよく登場する。