買うべきか、買わざるべきか…心動く「本居宣長の木製栞」 「古書目録」を眺める楽しさ
値段は3万8500円
熱烈、尾崎ファンのぼくとしてはやはり入手したい。
文行堂さんの勝海舟や山岡鉄舟の書も気になるし、時間が経(た)つのも忘れてしまう。
終活(嫌な言葉ですね)のためもあって、既に本を処分しつつあるところだから、買ってはいけないのだが、迷いに迷う。
前にも書いたが、かつて古書目録を見て購入したぼくの持っているベスト2。
①岩波写真文庫全巻揃い。
九曜書房さんから買ったのだが、9万1200円。
昭和20年代に、かの名取洋之助さんが編集した小型(B6判)の写真叢書で、全286巻。これが、全巻揃っているのだ。
これは貴重だ。
実は目録では1冊欠けていた。
が、送ってきたのは全巻揃い。
添えられた手紙に「欠けた1冊が見つかったので」とあった。
全巻揃いなら、もっと高い値段が付けられたろうに、目録そのままの値段の請求書。
これには感動した。
特別のファイル48冊に数冊ずつ納められた小さな写真集を、時折、取り出して眺めている。
当時のことだからB6判にたくさん写真が入っていて、一点一点の写真は小さいのだけれど、そこにまた味がある。
②サマセット・モームのグレアム・グリーン宛書簡4通。
ホテルの便せん、中味は本の御礼などでたいしたことは書いていないのだが、なにしろ、モームからグレアム・グリーン宛ですからね。
店舗を持たず、目録だけでやっていた横浜の創古堂さんから購入。値段は正確には覚えていないのだが、たしか9万円ほどだった――。
「本居宣長の木製栞」、買うべきか、買わざるべきか、まだ、迷っている。
(月刊『Hanada』編集長 花田紀凱)