監督の目指すもの/5止 大舞台でも平常心で 意識高め互いに成長 /香川
<第91回選抜高校野球 センバツ> 「例年のチームに比べて意識が高く、自分たちでよく考えられている」と長尾健司監督は今のチームの姿勢や人間性を評価する。一方で、「とは言っても、高校生ですから」と足りない部分も指摘する。まだまだ伸びしろがあるとの期待の裏返しだ。センバツ開幕までに技術面だけでなく、人間性も更に成長できると信じている。 練習中、選手たちは仲間のプレーを評価する声をよく出している。しかし、長尾監督から見ればほめる言葉は多いが厳しい指摘が足りないという。「仲良しこよしと、チームワークが良いのは全く違う。もっと他人に厳しくなってほしい」。本当に仲間のことを大切に思っているなら、厳しい指摘が成長につながるきっかけになる。「人に甘くなると、自分にも甘くなってしまう。他人に厳しくすることで互いに意識を高め合ってほしい」と望む。 選手自身も己を磨こうと必死だ。香川卓摩投手(2年)は新チーム発足当初から、昨年史上初となる2度目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭(大阪)に関する動画を見て参考にしている。「大阪桐蔭も選手主体でやっているが、練習に対する意識のレベルが高い。自分たちは、まだまだ監督に頼っている部分が多いと気づかされる」。最終的には監督と相談せず、自分たちだけで日々の練習メニューを決めることが目標だという。 近づいてきたセンバツに向け、長尾監督は甲子園で勝つには平常心で戦えるかが重要になると語る。「甲子園の独特の雰囲気にのまれてしまっては、いつものプレーができない」。3年前に準優勝したチームも初戦は硬さがあったといい、中盤に一時逆転を許す苦しい展開になった。雰囲気にのまれないためには「練習は試合のつもりで、試合は練習のつもりで、という意識が大事」と訴える。普段から本番のような緊張感をもつことで、大舞台でもいつも通りプレーできると説く。 飛倉爽汰主将(同)もセンバツへ向け、さらに気持ちを引き締めている。「甲子園は選手だけでなく、応援団など学校全体で戦うイメージ。普段の生活で信頼関係を築けていないと先生方や他の生徒に応援してもらえない」と話す。練習だけでなく、学校生活でも甲子園を意識することを仲間に求めているのだ。 長尾監督が掲げる「考える野球」の下、互いに意識を高め合いながら練習に励む選手たち。夢舞台で躍動できるよう、日々成長を続ける。=おわり(この連載は潟見雄大が担当しました)