議員の「知りませんでした」もう終わりに 看板にペンキ投げつけられた苦い記憶 元特捜部長の五十嵐紀男弁護士に聞く【裏金国会を問う】
▽「会計責任者に任せていた」との弁解通らない法改正を ―規正法違反を立件する難しさはどこにありますか。 「金を使っているのは議員なのに、規正法の罰則の対象は事務方であるところです。議員側からは『会計責任者に任せていた』という弁解が考えられ、規正法が『ザル法』と呼ばれるゆえんです。自ら責任を持てない収支報告書を提供すること自体、国民に対しての冒涜だと思います」 ―今回の法改正はどのような方向で進めていくべきですか。 「弥縫策ではなく、議員の責任も免れなくするような抜本的な見直しが必要です。一つは、党からの寄付について収支報告書に記載しなければならないということを盛り込むべきです。『政策活動費』という弁解の根拠になっているからです。また、上場企業が損益計算書や貸借対照表を取締役会の承認を経て株主総会に提出していることにならって、議員を含めた政治団体の機関に収支報告書の承認を求めたり、収支報告書に議員が内容を確認した旨の署名を義務付けたりするなど、『知りませんでした』という弁解が通らないようにしないといけません」 いがらし・のりお 1940年北海道生まれ。東京地検特捜部長や大分地検検事正、千葉地検検事正などを歴任。99年、横浜地検検事正で退官。
× × × 事件を受け、岸田文雄首相は「再発防止策に早期に取り組む」と述べ、今国会中の規正法改正を表明している。自民党は政治資金収支報告書の提出時に国会議員による「確認書」添付を義務付け、不記載・虚偽記載への監督責任を明記するなどの独自案を示したが、野党や公明党が求める抜本改革が実現するかどうかは不透明だ。一方で派閥幹部らを不起訴とした特捜部の処分を巡っては検察審査会に審査が申し立てられており、検審の判断によっては特捜部は再捜査をすることになる。