食料問題に懸念… NTTグループが「スマート陸上養殖」参入へ スッポンの陸上養殖には「温泉」活用
日テレNEWS
陸上の施設で魚介類の養殖をする「陸上養殖」が注目されています。27日、通信大手のNTTグループが「スマート陸上養殖」への参入を発表しました。背景にあるのは、人口増加に伴う食料問題への懸念です。また、新潟・南魚沼市では、温泉を活用したスッポンの陸上養殖が行われていました。 ◇ 27日、NTTグループが「スマート陸上養殖」への参入を発表しました。京都大学発のスタートアップ企業とともに、新会社を立ち上げました。 NTTがもつAI(=人工知能)技術などと、京都の企業がもつ最先端の品種改良技術などをいかすことで、より効率的な養殖を目指すといいます。なぜ、通信大手のNTTが陸上養殖に参入するのか。その背景にあるのは、人口増加に伴う食料問題への懸念です。 NTTグリーン&フード 久住嘉和社長 「10年後の食卓を本当に維持できるのかと。水産のあり方というところを我々は貢献したい」 7月から九州の拠点で事業をはじめ、順次、全国展開していく計画だということです。 ◇ 水産資源の減少が懸念される中、養殖業が注目されています。 福島・いわき市の水族館「アクアマリンふくしま」が養殖技術の基礎研究に乗り出したのは、サンマです。サンマは漁獲量が年々減少していて、去年は不漁の影響で価格も高騰しました。 全国のサンマの水揚げ量(※全国さんま棒受網漁業協同組合による) ◇2008年:34万3225トン ◇2019年:4万517トン ◇2020年:2万9566トン ◇2021年:1万8291トン ◇2022年:1万7910トン こうした状況に対応するため、「アクアマリンふくしま」では北里大学・関西大学・国立遺伝学研究所など3つの研究機関と連携しました。 サンマの飼育に取り組むアクアマリンふくしま・山内信弥さんは「水槽内繁殖で展示する手法をとっていますね」と話します。 実は、23年前の開館当初から、世界で唯一、水槽内で繁殖させたサンマを展示しています。そのノウハウをいかし、養殖に向けた研究を進めていますが、育て方に違いがあるため、課題もあるといいます。 アクアマリンふくしま 山内信弥さん 「(飼育展示は)次世代を残すために、密度低く産卵するまで飼育・展示していく手法で。養殖の場合は、短期間で一つの水槽でいかに多く育てるかというのが技術の一つ」 研究が「サンマの養殖が可能かどうかの判断材料になれば」と話しています。 ◇ 一方、地元の水産加工会社「上野台豊商店」は、研究に期待の声をあげています。この会社では、扱う魚の8割がサンマのため、近年の不漁は痛手だと話します。そのため―― 上野台豊商店 上野台優代表 「ぜひ、わたしの方でも販売できるくらい、養殖が成功してほしいなと思っています」 ◇ 新潟・南魚沼市では、スッポンの陸上養殖が本格化しています。“寒さに弱い”スッポンを雪国・新潟で育てるため、池には温泉を使用していました。 魚沼スッポン 井口陸弥さん 「かけ流しています、温泉を」 さらに、えさに地元の酒蔵で出た「酒かす」を使うことで、栄養価が高く、うま味の強いスッポンに仕上がるということです。 ITから温泉まで、進化を続ける陸上養殖に注目です。