各局の戦略クッキリ&マル秘エピソードも公開! 2024秋『本当に観るべき連ドラ』はコレだ!!
小粒で地味だが、熱狂的に支持される良作もある――今年の秋ドラマを一言で表現すると、こうなるだろうか。 【貴重写真】す、すごいオーラ…!長身スーツでドラマ撮影に挑む ジェシーの姿が…! 各種数字が出揃ったところで(上の表参照)見えてきたのは、各局の戦略だ。キー局プロデューサーが分析する。 「フジテレビは一話完結型でありつつ、最終的に一本の大きなストーリーとなるドラマが増えていて、明らかにネット配信を意識しているのがわかります。TBSにはオリジナル作品で勝負するんだ、という気概を感じる。一方、『セクシー田中さん』の悲劇を払拭したい日本テレビは、果敢にも『放課後カルテ』など今期も原作モノに取り組んでいます。ただ、156年前の作品『若草物語』にも手を出していて、やや迷走している感がありますね。テレビ朝日は原点回帰。得意とする世帯視聴率をしっかり獲るべく、人気作の続編モノを手堅く持ってきた」 ◆お蔵入りになりかけた そんな今クール、各局が指標としているコア視聴率(13~49歳男女の視聴率)で1位、世帯でも3位に輝いたのが『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)だ。 「活気あふれる炭鉱の島・端島(軍艦島)の再現度合いが素晴らしいです。民放ドラマでここまでできるのはTBSの看板枠、日曜劇場だけでしょう。『アンナチュラル』と『MIU404』(いずれもTBS系)で、数々の賞を獲った脚本・野木亜紀子、演出・塚原あゆ子、プロデュース・新井順子という座組。徐々にストーリーやテーマが明らかになっていく仕掛けで、ここから数字を上げていくはずです」(ライター・大山くまお氏) だが、好発進の裏側で「ピンチ」が発生していたことはあまり知られていない。 「端島は ″朝鮮半島出身者の強制労働をめぐる日本政府の対応が不十分″として世界遺産登録の取り消しを求められたことがある。そこに対する制作側の認識が不十分で、根回しなくドラマ化が進められていて、お蔵入りになりかけた。急遽、関係各所と話し合いを持ち、なんとか放送に漕ぎつけたという経緯があるのです」(TBS関係者) フジの看板枠の月9『嘘解きレトリック』もコア3位と奮闘している。 「人気少女漫画が原作なのですが、原作ファンの評価が高い。日曜劇場ばりにお金をかけて、原作の世界観を見事に再現できているからでしょう。これまでルックス的に″かわいい後輩&弟″役が多かった鈴鹿央士(24)が、人間性に深みのある魅力的な探偵を好演しています」(ドラマウォッチャーの川田美尋氏) 共演は松本穂香(27)。主要キャストが弱い、冒険だと危惧する声もあったが、「挑戦できるのが、近年の月9の良さ」だと民放ディレクターは見ている。 「前クールは『silent』チームによる『海のはじまり』。かつてのトレンディドラマとは真逆です。静けさに包まれたまま物語が進行していく、家族モノとも恋愛モノとも言えない作品でしたが、考察ファンには大人気でした。重厚な作品が求められている日曜劇場にはできない、新鮮さで勝負できる枠になりました」 ◆好調作品の「二つの共通点」 川田氏は『相棒』『ザ・トラベルナース』(いずれもテレ朝系)など、好調な作品には「共通点がある」と言う。 「バディものが隆盛なんです。フジなんて先の『嘘解きレトリック』、反町隆史(50)の『オクラ』、『全領域異常解決室』と並べてきた。なかでも出色の出来なのが『全決』です。『マイファミリー』や『ラストマン』(いずれもTBS系)など、数多の話題作を手掛けてきた業界注目の脚本家・黒岩勉のオリジナル作品で、″堤幸彦監督の『SPEC』シリーズに通じるものがある″と放送前から話題でした。設定もキャストもまるで違うのですが、回を重ねるごとに『SPEC』ファンがSNSで盛り上がっており、早くも映画化を期待する声が出ています」 民放ディレクターは「今期の作品にはもうひとつ共通点がある」と見ている。 「ゴールデン帯に、旧ジャニーズタレントの主演作がないんですよ。『モンスター』(フジ系)の2番手に『SixTONES』のジェシー(28)、『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)の2番手に『Kis-My-Ft2』の玉森裕太(34)がいるくらい。旧ジャニーズの大物タレントを主演で起用するには、基本的に1年前にスケジュールをおさえておかねばならない。昨秋、大きな節目を迎えた性加害問題の影響がモロに出たクールとなりました」 特に旧ジャニーズ不在の影響が大きかったのが、ネット配信なのだという。 「旧ジャニーズ、なかでも『Snow Man』メンバーが出るかどうかで、TVerの再生回数は大きく変わります。YouTubeのドラマ考察チャンネルの再生回数も、0がひとつ違ってきます」(放送作家の愛田プリン氏) 件(くだん)の『モンスター』は視聴率こそ振るっていないが、「ネットではヒットの兆しがある」とは民放ディレクターの弁だ。 「TikTokの宣伝動画がバズっています。TVerもお気に入り登録者数こそ70万弱ですが、第1話の見逃し配信の再生回数が200万回を突破。本作はNetflixでも配信されていて、そちらのランキングでは毎回上位に入っています」 ◆令和の「エロドラマ戦略」 そのTVerお気に入り登録者数で、唯一の100万人超えをはたしたのが、『わたしの宝物』(フジ系)だった。 「他の男性との間にできた子供を、夫の子と偽って産んで育てる″托卵″がテーマで、主人公は2クール連続で主演と上り調子の松本若菜(40)。『昼顔』と『あなたがしてくれなくても』を手掛けた三竿玲子プロデューサーが送り出す″越えてはいけない一線を前に葛藤する主婦や夫婦のタブー″に触れたヒリヒリ、ドロドロしっぱなしの物語です」(民放幹部) 『Snow Man』の深澤辰哉(32)が″最愛の人″役で出演していることに加え、もうひとつ「TVerでウケる強みが本作にはある」と愛田氏は言う。 「第1話から松本と深澤のベッドシーンがあったようにエロがポイントです。家族と一緒には視聴できないので、かつては夫が仕事で不在の昼間を狙って過激なエロドラマを投入していましたが、令和の今は好きな時間にスマホで鑑賞がトレンド。だから視聴率は振るわないのに、TVerでは絶好調なのです」 お気に入り登録者数2位につけたのが『ライオンの隠れ家』(TBS系)だ。 「柳楽優弥(やぎらゆうや)(34)と坂東龍汰(りょうた)(27)がとにかく素晴らしい。柳楽は抑えた演技ながら、たまにポロッと口にする一言が胸に沁みます。今の暮らしを守るだけで精一杯の人が多い中、それでも誰かに優しくする勇気、大変さがきちんと描かれている。ミステリーの部分も本格的で、次のエピソードが早く観たくなる仕掛けとしてうまく機能しています」(大山氏) 「何も考えずに楽しむには最高」との声が多かったのは『民王R』(テレ朝系)だ。 「前作に主要キャストとして出ていた菅田将暉(31)と高橋一生(43)が抜けてパワーダウンを指摘する声もありましたけど、菅田はナレーションで、一生もサプライズで登場。主演の遠藤憲一(エンケン)(63)も大喜びだったとか。『なにわ男子』の大橋和也(27)が『大きな栗の木の下で』を歌いながら、『なにわ』のデビュー曲のダンスを披露した演出もバズりました。タイミングよく行われた衆院選や米大統領選への風刺も利いていた」(民放幹部) 櫻井翔(42)主演の『大病院占拠』『新空港占拠』(いずれも日テレ系)を手掛けたチームによる『潜入兄妹』(日テレ系)は評価が割れている。 「占拠シリーズでは櫻井が演じた刑事の口グセである『ウソだろ』と言わせる展開に腐心していてどうかと思っていたのですが、今作では竜星涼(31)に『最悪だ』という口グセを設定しようとしている。竜星の演技がいいだけに流れの無理矢理感が″なんだか痛いな″と。Vシネマ風の雰囲気も、週末に観るにはそぐわない」(川田氏) 狂喜乱舞しているのは″考察班″だ。昨今、新しいドラマの楽しみ方としてウォッチャーたちの間で確立されたのが、登場人物のセリフ等を吟味して、犯人や黒幕の正体などを予想する「考察」だ。 考察班と呼ばれる予想好きウォッチャーたちの一人で、VTuberのyumelive氏が本作を激賞する。 「詐欺集団『幻獣』の正体が徐々に明かされたり、謎の内通者がいたりと、本作は考察ドラマの真骨頂。凄いのが、モールス信号を使って公式HPで″次に起こること″の匂わせをしていること。公式HPと公式X、担当プロデューサーのXなど、チェックせねばならないところは多いけど、伏線回収の爽快感がたまりません」 楽しみ方にも多様性――テレビマンたちの試行錯誤はしばらく続きそうだ。 『FRIDAY』2024年12月6日号より
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