同い年の藤井八冠を“カド番”に追い込む…叡王戦の挑戦者・伊藤匠七段の素顔「タイトル戦を経るたび強く」
■藤井八冠とは小学3年時に“初対局” 当時のライバルが振り返る伊藤七段の人となり
小学3年生の2012年1月、東京で行われた将棋の全国大会。小学3年生の部・準決勝で藤井八冠と初めて対戦し、勝利する。藤井八冠は大泣きして、ゲストの棋士がなだめる一幕もあったといいう。 伊藤七段: 親とかから当時の話を聞くことはありますけど、自分の記憶には残ってはいないです。 この大会では伊藤七段も準優勝で、優勝したのは川島滉生(こうせい)さんだった。 伊藤七段と同じ将棋教室にいた、当時のライバルだ。 川島滉生さん: 彼以外に見ていなかったというか、本当にライバルは彼1人だったので。少なくとも同い年では彼は抜けているんだろうなと思っていましたね。(伊藤七段は)寡黙ですね。自分から話しかけることはしないし、プライベートな話とかもほとんどしないんじゃないですかね。むこう(伊藤七段)が負けたとしても、こっちに変な手があったらそれを指摘するんですよ。「お前そこミスだろ」みたいな感じで。で、指摘したのに「もう1回やろう」と言ってくる。 川島さんはプロ棋士を目指さず、早稲田大学法学部に進学し、部活で将棋を続けている。 川島滉生さん: 才能がある人がすごい努力をして、やっとプロになれるかどうかの世界なわけで、そこに行くのだったら一般社会で普通に生きていた方が楽だろうな。我ながら賢明な判断をしたと思っています(笑) そんな中、2016年には史上最年少で藤井聡太さんがプロになった。 川島滉生さん: たっくん(伊藤七段)より強い人いたんだ、同い年で。恐ろしいなと思いましたね。
■初タイトル戦から直接対決は10連敗も過去のライバル「強くなっています」
伊藤七段の最初のタイトル挑戦は、2023年の竜王戦。八冠達成で、日本中が藤井フィーバーに沸いていた時だった。 伊藤七段(2023年10月16日 竜王戦第2局前夜祭): 藤井竜王は先日八冠を達成されまして、本当におめでとうございます。 同学年同士の初タイトル戦。伊藤七段は静かな闘志を燃やすが、結果はストレート負けだった。 その後、立て続けに棋王戦の挑戦者に。第1局は互いに玉を詰ます見込みがなくなり、引き分け。伊藤七段は入念な戦略で、不利な後手番をしのいだ。 藤井八冠: 結果的に伊藤七段の手のひらの上というか、そういう将棋になってしまったのかなと思います。 しかし第2局以降は敗れ、この時もタイトル獲得はならず、伊藤七段は棋王戦までで藤井八冠に公式戦10連敗となった。 伊藤七段: 中盤でこちらがバランス崩す展開が多かったので、前回の竜王戦から課題でもあったんですけどなかなか修正できなかった印象ですね。 しかし、かつてのライバル川島さんはその強さを見逃してはいなかった。 川島滉生さん: タイトル戦を経るたびに、伊藤段七段が強くなっていますよね、明らかに。それに伴って藤井さんも対策を変えている印象を受けるので、藤井さんの伊藤七段に対する警戒の度合いが、徐々に高まっているのだろうというのは推察されます。 川島さんは、タイトル挑戦のたびに伊藤七段にメッセージを送っている。 川島滉生さん: おめでとうございます、ありがとうございますくらいです。 LINEのメッセージ画面を見せてもらうと、伊藤七段のアイコンはドラゴンズのマスコット、ドアラの画像だった。 川島滉生さん: 一時期、ドラゴンズが勝たないから見ないと言っていた気もする。