<インド・炭鉱>沈んだ村(その1) ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
炭鉱地ジャリアにあるアンガルパトラ村を訪れると、数人の村人たちが、瓦礫の上にたたずんでいた。2週間程前、ここにあった45世帯の家が、地盤沈下のために崩壊してしまったのだ。 地盤沈下は、地下で燃え続ける石炭の地下火災によって引き起こされる。現在ジャリアでは、およそ10万家族が、地盤沈下の危険に晒されているという。政府はこの数年の間に6千家族ほどを移動させたが、街から離れた不便な過疎地に移った人々は、仕事を得ることもできずに日々の暮らしに窮するばかりだ。それでも政府からの補償など、何もない。 一人の男が息子と一緒に、散乱したレンガを拾い集めていた。 「次の家を建てる時のために、自分の煉瓦をとっておくのさ。何処になるのか、いつになるかはわからないけどね」 (2014年12月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.