洋画の字幕を見るように、AIが言葉の橋渡し
ポケトークが同社のAI通訳サービス「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」に双方向コミュニケーション機能を追加し、サ[ービス名を「ポケトーク ライブ通訳」に変更した(発表PDF)。 ■AIで異言語コミュニケーションがグッとラクに このサービスは、スマホやパソコンなど、各種デバイスのブラウザを使って利用できる同時通訳サービスだ。2023年3月に単独アプリでのサービスとしてスタート、11月にはブラウザ版に移行した。 自分とは異なる言語を話す相手の言葉を聞き取り、それを自分の言葉に翻訳して字幕表示、あるいは、音声出力をすることができるというものだ。 これまでは、自分が話すときには手動で切り替える必要があったが、双方向コミュニケーション機能の追加により、選択した2つの言語を音声認識AIが自動的に判別するようになった。これで、対面での双方コミュニケーションがとてもラクになったといえる。 この機能は、日本、米国、欧州などでグローバルで同時リリースされ、すでに利用できるようになっている。双方向対応言語は英語、日本語、韓国語、中国語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語間の通訳となる。全対応言語数はもっと多く74言語ある。 パソコンやスマホのマイクは、周辺音声の拾い方やそのノイズキャンセルなどに長けている。対面で外国の人と話をするにしても、そのときに応じてマイクの指向性をAIが自動調整するなどできるので、こうした使い方にはもってこいだ。こういうところでもAI機能の恩恵が得られている。 ■長い解説や講演も母国語に。文字で読めるのも便利 逐次通訳と同時通訳はどちらも、母国語が異なる同氏の会話において重要な役割を果たす。だが、逐次通訳は会話に倍の時間がかかる。なので、まるで映画を見ているように、身の回りで話される異国語が、デバイスに表示される字幕として出てくるというのはかなり便利だ。ちょうどテレビの字幕をオンにしたようでもあるし、あるいは、映画館で字幕洋画を見ているようでもあるので見慣れた感もある。 料金は毎月30分無料で、サブスクリプションで3,300円/月や33,000円/年で無制限利用となる。たとえば海外出張や旅行に出かけるときだけにサブスクするというのでもよさそうだ。世の中には通訳アプリはたくさんあるが、環境音をそのまま字幕で表示できるものというのは意外に見つからないことに気がつく。 外国の観光地や視察地を巡るツアーに参加して、ガイドのしゃべる異国語が、片っ端から字幕表示されればどんなに便利だろう。スマホのGoogle翻訳やDeepLサービスなどでは、相手がライブで一方的に延々と喋る内容を、その場でどんどん翻訳してもらうといった使い方は難しく、どうしても途中で中断してしまう。 そういう意味では異国語の会話が読めるようになるというのがこのサービスの特徴だ。パソコンでもスマホでも大丈夫というのも汎用性があっていい。日本語は漢字とひらがなを使うので、パッと一目で理解できる字幕は重宝する。 ■外国語を理解する新しい切り札になるか コロナ禍には、オンラインコミュニケーションの機能がどんどん拡充されるのを目の当たりにした。その中で同時通訳機能もいろいろな進化を果たしてきた。今、世の中は、どんどん対面コミュニケーションに戻りつつある。 上司に命じられて出席したセミナーが、外国語のみで小一時間かけてプレゼンテーションが行われるようなものであっても、パソコンやスマホでこのサービスを利用すれば、聞こえる外国語がその場で日本語の字幕になって表示される。 ある程度外国語がわかる場合でもこれはありがたい。学生が外国人教師の授業を受けるようなときにも役にたちそうだ。問題があるとすれば、多少理解できる外国語と字幕のタイムラグくらいだろうか。これもAIの進化がそのうちなんとかしてくれそうだ。 通訳結果は、あとでレポートをまとめるようなときにも役にたつし、AIを使って要約させるようなこともできそうだ。この分野、AIを活用して、これからまだまだ進化していきそうで、この先が楽しみだ。 ■ 著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。
山田祥平