休日の軽井沢であえて営業しないわけは スタッフ7人が子育て中、支え合って作るドーナツ
長野県ならではの味
北佐久郡北佐久郡軽井沢町の観光名所、旧軽井沢銀座通り入り口に2021年8月にオープンした「ウフフドーナチュ旧軽井沢」。店内で手作りしたドーナツ約20種類などが並び、観光客らでにぎわっている。 【写真】「ウフフドーナチュ旧軽井沢」が作るドーナツ。長野県産の食材にこだわっている 信州産の食材を生かした商品が目を引く。塩尻市のワイナリーの赤ワインを使ったドーナツのコンセプトは「1日の疲れを癒やしてもらう『大人のご褒美』」。長野市の七味唐辛子の老舗とタイアップした「オールドファッション七味チョコ」は「家族でわいわい食べてもらえる」話題性を追求した。 ドーナツ以外にも、小諸市御牧ケ原台地特産の「白土ばれいしょ」などを使ったポタージュを開発。生産農家から流通に乗せられない規格外品が全体の10~15%あると聞き、フードロス削減や農家支援につなげたい―と思い立った。「県産品とのコラボレーション商品は、今後も数カ月おきには出していきたい」。ゼネラルマネージャーの大塚菜穂子さん(41)=御代田町=は力を込める。 店は、全国約300の百貨店やスーパーなどにドーナツを卸す株式会社ウフフ(金沢市)の唯一の支店。1日平均で卸用に約1500個、店頭用に約150個のドーナツを製造する。大塚さんは店の「生みの親」とも言える存在だ。
「週末は子どもとの時間を大切にしてもらいたい」
御代田町出身の大塚さんは群馬県内の大学を卒業後、同県内の証券会社に5年間勤めた。その後、ウエディングプランナーとして2年ほど働いたが結婚、出産を機に退職。夫の仕事の関係で上田市に移り住んだ。 育児で自宅にいることが増え、「空き時間にできることはないか」との思いが募っていたところ、ウエディングプランナー時代に同僚だった志賀嘉子さん(40)=金沢市=が、故郷の石川県でドーナツ店を起業したことを知った。「結婚や育児で、やむを得ず仕事から離れた女性たちが、能力を再び発揮できる職場を広げたい」との思いを共有していた2人。大塚さんは18年にウフフに入社し、自宅で企画書などを作るリモートワークを始めた。21年、「金沢にもう1店出そうかな」と言う志賀さんに大塚さんは言った。「私が切り盛りするから軽井沢に出してほしい」 軽井沢の店には「働くママに寄り添える職場を」との大塚さんの思いが反映されている。20~60代のスタッフの女性9人のうち、7人が子育て中。長野市内でのリモート勤務も1人いる。スタッフが保育園や児童館などへ子どもを迎えに行く時間を考慮し、営業は午後4時まで。観光スポットに立地しているが、「週末は子どもとの時間を大切にしてもらいたい」と土、日曜、祝日は書き入れ時でも営業しない。 同じ仕事ができるスタッフを常時3人以上そろえ、急用による早退などにも対応。子どもの入学式や運動会などが重なる時は、「事前にみんなで調整して、製造日程を組みます」(大塚さん)。 「ママ同士、お互いを理解し合う空気が生まれるのは強み」と大塚さん。女性スタッフの視点は商品開発にも生かされている。ウフフで働きながらこれから子育てしたい―と志望してくる女性もいるといい、「さまざまな女性が活躍できるよう、門戸を広げていきたい」と話している。(矢沢 健太郎)