考察『錦糸町パラダイス』4話。街を観るカメラと車からの視線に注目
錦糸町を舞台に起こる悲喜こもごもをカメラを通して映し出す視点に注目して、ドラマ24『錦糸町パラダイス~渋谷から一本』(テレ東金曜深夜24時12分~)4話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
カメラがとらえた錦糸町という街の人々
4話には、主人公たる清掃会社「整理整頓」の3人(賀来賢人、柄本時生、落合モトキ)はそこまで出てこない。この回では「錦糸町フェス」のドキュメンタリーを撮っている安住(松岡広大)の視点から錦糸町の景色が描かれる。 安住は映像制作会社「リアルフィクション」の社員。フィリピンパブに通い詰め、まともに仕事をしていないようすの社長はなにかと社員を怒鳴りつける横暴な振る舞いを見せる。そのせいで、どんどん社員が辞めていく。4話に至ってはとうとう社員が安住ひとりになってしまった。1話で彼は「やりたいです」と自ら「錦糸町フェス」のドキュメンタリー担当に立候補していた。けれど、そんな彼もとうとう限界を感じ、街角に座りこんだり、インタビューをしながら涙ぐんだりしてしまっている。この会社の社長を演じているのが、柄本とともにプロデューサーを務め、脚本にも参加している今井隆文だ。いいところのなさそうな社長だが、3話で辞める社員から「昔の社長はどこ行ったんですか」と言われていることから、昔はやる気と能力に溢れる人物だったのかもしれない。 安住は街のあらゆる人に声をかけては「錦糸町フェス」についてインタビューを重ねていた。ミカ(矢野あゆみ)、整理整頓の受付嬢の二人、「リアルフィクション」の人々、居酒屋の女将(MEGUMI)、中学生たち。過去の回ではまっさん(星田英利)にもインタビューしている。彼のカメラは、この街を映し出すひとつの目だ。 4話に現れたもうひとつの目は、「整理整頓」の車を運転する一平(落合モトキ)の視線。座り込む安住に、たまたま居合わせた「喫茶デルコッファー」の心音(さとうほなみ)が声をかける瞬間。3話で銅像にいたずらをしていた(安住もインタビューしていた)中学生4人が走り去る姿。OL(松井愛莉)にセクハラをしていたとして左遷されたらしい東海林(忍成修吾)。1話で掃除に行った車椅子の夫(板尾創路)とその妻(菜葉菜)。錦糸町という街で暮らす人々を、一平たちは車から、ただ観る。