有害鳥獣、ペットフードに、年内販売へ 愛媛・鬼北町が加工施設、捕獲者の負担軽く
愛媛県鬼北町が、駆除した有害鳥獣を活用しようと、イノシシや鹿を解体、加工してペットフードを作る施設を建設した。捕獲者が後始末する手間を省き、負担を減らす狙いもある。2023年10月から稼働し、試作を重ねている。年内にも販売を始め、2026年度中の黒字化を目指す。町担当者は「深刻な鳥獣被害を克服しつつ、広く人気を集める商品を売り出したい」と力を込める。(共同通信=山口裕太郎) 愛媛県によると、2022年度の野生鳥獣による県内の農作物被害額は約3億6千万円に上った。鬼北町を含む県南部地域が約65%を占め、イノシシの被害が最も多い。果樹や稲、麦などの食害が目立つという。 山奥などで駆除した鳥獣は、その場に埋めて処理するのが原則だ。その際、他の鳥獣の餌になるのを防ぐために深さ50センチ以上の穴を掘る必要がある。高齢化が進む捕獲者の負担になり、意欲の低下につながっていた。 そこで鬼北町は、工費約3億8500万円をかけて「ジビエペットフード加工処理施設」を建設。駆除した鳥獣の受け入れからペットフードの製造、販売までを指定管理者の「ありがとうサービス」(愛媛県今治市)が担う。
鳥獣は24時間受け入れる。捕獲者が、施設内に設置された冷凍庫に搬入。施設が引き取り、内臓の処理などをして枝肉に分け、ペットフードへと加工する。2025年度には鬼北町の近隣3市町からも受け入れ、イノシシと鹿合わせて約2200頭の処理を目指す。 ペレット、ジャーキー、ミンチの3種類を販売予定で、無添加、国産原料にこだわる。豊富なタンパク質が特長だ。価格は、ペレットで1キロ当たり3千~5千円を見込んでいる。 市販のペットフードより高価だが、鬼北町の担当者は「安全でおいしいジビエの餌をペットが気に入れば、飼い主にも繰り返し購入してもらえる」と期待を寄せる。インターネットで売るほか、ふるさと納税の返礼品にも活用する方針だ。