石破首相の防災省構想 想像絶する災害へ備えよ 南海トラフは家具四散し恐怖で逃げられぬ 経済ヨコからナナメから
就任1カ月が過ぎた石破茂首相の肝いり政策が「防災省」の新設だ。天災が頻発する中、平時の防災から災害後の復旧・復興までを一元的に指揮する組織にするという。もっとも、南海トラフ地震や首都直下地震では、想像を絶する事態で死者数が膨らむ「社会現象の相転移(そうてんい)」が起きると専門家は警告する。「事前対策」に注力するまったく新しい組織をつくれるか、首相の覚悟が試されている。 「財務省が渋り、みみっちいカネしか出そうとしないんだ。倍は出させてやる」 平成23年3月の東日本大震災後、国の復旧・復興予算をどれくらいの規模にするか議論されていたころ。政権与党だった民主党(当時)のある衆院議員は、こう息まいた。 口ぶりは高飛車ながら、政治家が主導して存分に地震対策へ腕を振るえないいらだちがかいまみえた。議員の選挙区には海があり、岸や港の対策に十分な予算をつけたいといつも言っていた。 今も昔も災害は日本で多発している。今年1月に起きた能登半島地震の死者は関連死を含め400人を超えた。そんな中で首相に就いた石破氏の持論は防災省の設置だ。 石破氏の問題意識は9月7日のブログに記されている。石破氏は東日本大震災後、避難所の被災者から「(陳情や要望などが)なぜ各省庁をたらい回しにされなければならないのか」と言われたと紹介。 今の内閣府防災担当の職員は100人程度にすぎず「災害発生後の事態対処はパンク寸前」と指摘し、職員も「国交省や厚労省などの各省庁からの出向者が多く、2年経(た)ったら元の役所に帰って」いくため、「知識や経験の蓄積」もできないとした。 行政による情報発信の不十分さや初動遅れ、復旧の進まなさなど、さまざまな課題が災害のたびに指摘されてきた。防災省がこうした課題を一気に解決する司令塔になるなら設立も意味がある。政府は前組織として令和8年度中に「防災庁」をつくる考えで、準備室を11月1日に新設。内閣府防災担当の機能を強め専任大臣を置くとしている。 だが、ブログで石破氏は「防災省は、強力な指揮命令権限を持つ巨大な官庁ではありません」ともする。自由に使える予算や人員を十二分に獲得し、災害対応に強いリーダーシップを発揮する決意があるのかメッセージは伝わってこない。