石破首相の防災省構想 想像絶する災害へ備えよ 南海トラフは家具四散し恐怖で逃げられぬ 経済ヨコからナナメから
さらに専門家は、防災庁をめぐる政府の動きをみて「今までもそうだが、予想もできない災害が起きることを想定していない」と批判する。
関西大学特別任命教授の河田恵昭氏は「これまでの大災害では社会現象の相転移が起きた」、つまり思わぬ出来事が発生したことで犠牲者が増えたとする。
「阪神大震災では古い木造住宅の全壊・倒壊。東日本大震災では岩手県や仙台市の沿岸に押し寄せた津波。いずれも想定されていなかった事態で、対策が不十分だったり逃げ遅れたりして多くが亡くなった」
防災省も、首都直下地震や南海トラフ地震でどんな相転移が起き、どんな事前対策を取れるか真剣に考えてつくらなければ失敗する、と河田氏は話す。
「南海トラフ地震は震度6弱以上の揺れが1分以上続き、高さ1メートル以上の家具が転倒防止措置をしていても四散する。住民は恐怖で屋外へ避難できなくなる」
こうした事態は以前の地震で起きたことがない。これを含め何が起きるか予想しつくした上でどう対処するかが重要となる。さらに河田氏は、研究者の専門的な意見を聞きながら、各省庁が何をできるかの知恵を防災省は集めなければならないと話す。
南海トラフ地震や首都直下地震に対応できなければ「日本が潰れる」と河田氏。石破氏は拙速に陥らず、防災庁や防災省のありようを腰を据えて考える必要がある。(山口暢彦)