「あいりん」支え半世紀のありむらさん、街描いた本を出版…4コマ漫画とエッセーで「労働者の生きる姿知って」
日雇い労働者の街として知られてきた大阪市西成区の「釜ヶ崎」(あいりん地区)で、半世紀の間、労働者の支援や街づくりに携わってきたありむら 潜せん さん(73)が、4コマ漫画とエッセーで変わりゆく街の姿を描いた本を出版した。ユーモアと優しいまなざしで労働者を見つめている。(高木文一)
「カマやんの日本一めんどくさい釜ヶ崎まちづくり絵日誌」(明石書店)。著者のありむらさんは大学卒業後の1975年、日雇い労働者の就労支援や生活相談を行う公益財団法人・西成労働福祉センター職員となり、2017年に退職後は主に街づくりに携わってきた。
本には、300本の4コマ漫画や130本のエッセーを収録。ありむらさんが釜ヶ崎で知り合った個性豊かな労働者の面々が登場する。
景気の波に 翻弄(ほんろう) され、仕事も家族も失った人もいれば、その日暮らしの生活に居心地の良さを感じ、「幸せな生き方をしてきた」と言い切る人もいる。
「愛犬チャロがくれた奇跡」と題したエッセーは、仕事に疲れて「就労拒否宣言」した男性が、野良犬との出会いを機に人生が一変したエピソード。
「このコ(犬)だけは世間並みの暮らしをさせてあげたい」と就職し、お見合いで犬を同席させたことで場が和み、結婚にこぎつけた。ところが、男性はその後、ひとりで釜ヶ崎に舞い戻り、「ええ経験をしたわ」と笑顔を見せた。ありむらさんは「釜ヶ崎は哀切とおかしみを包み込んだ街である」と表現した。
ありむらさんが向き合ってきた労働者の多くは、複雑な生い立ちや事情があり、劣悪な労働条件などから社会への憤りを抱えていた。それでも、たくましく生き抜く労働者の悲喜こもごもを、ありむらさんは4コマ漫画で描き、センターの広報紙で連載を続けている。
4コマ漫画は、ひげ面の「カマやん」が主人公。労働者からも「自分たちの人生を描いてくれている」と評判だという。ありむらさんは「ペンで釜ヶ崎を掘り下げ、働く人たちにオモロイと言われたかった」と話す。