「執行猶予つき判決」市川猿之助 “復帰前提”松竹はハラスメント疑惑に「第三者委員会での調査」を
両親に向精神薬を服用させて自殺を助けた罪に問われた歌舞伎俳優・市川猿之助に11月17日、東京地裁は懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)の判決を下した。裁判官は 【衝撃…写真あり】すごい…!「両親は亡くなって…」市川猿之助も搬送された「緊迫現場」写真 「自身に関する週刊誌の記事を読んだことをきっかけに自殺を考えた。両親が当初思いとどまるように言ったものの、猿之助被告の意志が固く一緒に自殺を決意した」 と指摘。 「短絡的というほかなく酌むべき事情が多いとは言えない。刑事責任は軽視することはできない」 としたうえで、後悔や反省の態度を示しており、前科前歴がないなどとして執行猶予付きの有罪判決を下した。執行猶予期間が最長の5年で、かろうじて実刑を免れた感じがしなくもない。 判決を受けて猿之助は 「今後は、生かされた自分に、これから何ができるか考えていきます」 というコメントを松竹の公式サイトで発表した。10月20日の初公判では 「自分には歌舞伎しかない。許されるのであれば、舞台に立ちたい。歌舞伎で償っていきたい」 との供述調書が読み上げられていることからも、一定期間謹慎したうえで歌舞伎俳優として復帰する可能性は高いとみられる。 松竹も17日に発表したコメントで 「市川猿之助としての今後につきましては、現時点ではまったく白紙の状態でございます」 としながらも、 「弊社としては市川猿之助のこれまでの歌舞伎界への貢献に照らせば、本人を是非支えて参りたいと存じますが、本日の判決をどのように受け止めるか、弊社としても本人と時間をかけて話し合い、また、今回の件が社会全体に与えた影響や責任からも目を逸らさず、皆さまからのご意見にも耳を傾けながら、進むべき道を共に模索して参りたいと思います」 として、歌舞伎俳優としてトップクラスの観客動員を誇っていた猿之助の復帰への期待をにじませた。 猿之助の将来的な歌舞伎俳優としての復帰を望むファンも多いはずで、猿之助にとっても、歌舞伎こそが生きる道であることは間違いないだろう。修羅場をくぐり抜けてきた猿之助がどんな演技を見せるのかも注目されるに違いない。 だが、その前にクリアしなければならない問題がある。今回の事件の発端となった週刊誌が報じた一門に対するセクハラ・パワハラ疑惑である。 猿之助は前述のコメントで、同記事について 「自分の記事が世に出るとき、そのこと自体により、四代目猿之助を継承した自分が『猿之助』 という名前のみならず歌舞伎界という大きな伝統と文化に対し深い傷を与えてしまうこと、また成長を歩み続けている猿之助一門のみんなを暗闇の中に放り出すこと、その現実の大きさから自死を選んでしまいました」 としているが、それが事実なのかどうかは明言しておらず、その具体的な内容について事実かどうかも含めて説明する必要があるのではないだろうか。 ジャニー喜多川氏の性加害問題などで行われたように、第三者委員会による調査・報告と再発防止策の発表。そして、それを受けて、本人による説明を行う必要がある。 松竹はコメントの中で 「現時点では報道された記事について、弊社として事実認識はございませんが、今後も然るべく確認を行い、その結果に応じて必要な対応を行ってまいる所存です」 としているが、そのためにも第三者委員会による調査が必要に思われる。 会社からは独立した調査チームでないと、会社を守ることや会社の利益を優先して真相が隠蔽される可能性も否定できない。猿之助の一連の事件にいまだに腑に落ちない部分を感じるとしたら、自殺ほう助事件の捜査と裁判のために、セクハラ・パワハラ問題の検証が行われていないからではないだろうか。 猿之助はコメントで、 「今後は、生かされた自分に、これから何ができるか考えていきます。これからは、一人で抱え込まずに、自分の弱さも自覚し、周囲の方々に相談し、助けていただきながら、一日一日一生懸命に生きていこうと考えています」 などとしている。 そのコメントからは一連の事件の捜査や裁判と判決を受けたことで、冷静さを取り戻したような印象を受ける。そうしたなか、一家心中を図る前に戻って、セクハラ・パワハラ問題に向き合い、さらには第三者委員会に調査してもらい、仮に被害者の救済・補償の必要性があるのなら適切に対応し、問題を解決してから歌舞伎の世界に復帰することが望まれる。 ジャニー氏の性加害問題や宝塚歌劇団の劇団員の女性が転落死したことをめぐる上級生のパワハラ疑惑や過重労働の問題などで、芸能界だけでなく社会全体が人権問題に前向きに取り組むようになっているなか、文化と伝統の歌舞伎界にも積極的な取り組みが求められているのではないだろうか。 文:阪本 良(ライター、元『東京スポーツ新聞社』文化社会部部長) Webマガジン『PlusαToday』を始め、芸能、映画、ハリウッド情報などの記事を執筆。日本映画ペンクラブ会員
FRIDAYデジタル