「天才リベロが経験した2度目の落選」男子バレー小川智大(28歳)が初めて明かす、“号泣の夜”の真相「止まらなくて…自分でもびっくりした」
“2人”にしかわらかないことがある
東京五輪直前の合宿まで練習に同行し、直後のアジア選手権にも出場した。フィリップ・ブランがコーチから監督に代わり、パリ五輪に向け本格的に始動した2022年から小川と山本が日本のリベロとして定位置を争う。それまで以上にハイレベルな争いを繰り広げてきた。言い方を変えれば、他の追随を許さないほど、2人の存在がずば抜けていた。 2022年世界選手権から翌年のネーションズリーグ、そして五輪予選も日本のリベロは山本と小川が選ばれた。山本は事あるごとに「小川がいるから自分を高められる」と述べ、小川も山本がいかにすごいリベロであるかを語る。「2人にしかわからない特別な関係」の守護神たちは、切磋琢磨しながらパリ五輪を目指した。 2024年の日本代表シーズンが始まる時、山本と小川にはブラン本人から「オリンピックのリベロは1人。だから選考がかかるネーションズリーグでは2人を交互に起用する」と告げられていた。 「マジで気合、入っていました。何より僕は、オリンピックに関係なく試合に出られないことが嫌で、それ自体にずーっと慣れなかった。言い方は悪いかもしれないですけど、面白くなかったですよね。自分が出たいわけだから、悔しいし、難しいじゃないですか。だからチャンスをくれたブランには、感謝しかなかったです」 ネーションズリーグの初戦、アルゼンチン戦には山本がスタメンリベロで出場。次戦のセルビア戦には小川が出場した。「覚悟を持って臨んでいた」という言葉に違わず、互いにできることはすべてやり尽くす、とコートで魅せた。
「トモさんのミスは願わない」
普通に考えれば、ライバルとのポジション争いの場はピリついていてもおかしくない。だが、互いが覚悟を持って戦う場だからこそ、小川は「リスペクトとポジティブであることに努めた」と振り返る。 「極論を言うと、相手がミスをしないと自分のチャンスは回ってこないかもしれない。でも僕はそういう考え方をすること自体が自分の価値を下げると思っていたので、絶対に嫌だった。トモさん(山本)のすごさは僕が一番わかるし、だからこそ普段通り。自分も自信を持ってやる。それだけ考えていました」 日本代表への注目度の高さも相まって、2人が平等に出場したネーションズリーグ期間中は、「リベロのポジション争いが熾烈」という記事がたくさん出た。見えないプレッシャーが、それまで鉄壁の守護神として君臨してきた山本にものしかかっていた。 ボールのインアウトのジャッジやレシーブの返球、これまでにはなかったズレが相次ぐ。そんな山本を誰より気遣っていたのが小川だった。 「試合に出ること自体は楽しかったですけど、僕もプレッシャーがめっちゃありました。相手がフローターサーブの時に隣の選手をカバーして(守備範囲を)広げて崩された時とか、『ここで崩されたことがメンバー選考に関係するかもしれない』と試合後に考えることもあった。だからトモさんにもタイムアウト中からずっと話しかけて『マジで気にしないほうがいい』って、ずっと言い続けていました」
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