天草エアライン全10便乗り継ぐ「行ったり来たりするだけ」12時間2800kmの旅…39席にファン殺到
熊本県天草市を拠点とする地域航空会社の天草エアラインが来年1~3月、同社が1日に運航する全10便を乗り継ぐ企画を3年ぶりに復活させる。九州内と関西までを行ったり来たりするだけの12時間、計約2800キロ・メートルの行程だが、売り出した計39席の枠に、全国の航空ファンから応募が殺到している。(姫野陽平) 【地図】天草エアラインの全路線
「乗るだけ運賃」と名付けた企画で、1日3往復の天草―福岡と、それぞれ1往復の天草―熊本、熊本―大阪(伊丹)の各定期便を活用する。天草空港を午前7時40分に出発して同8時20分に福岡空港に着いた後、そのまま同50分に出発。すべての定期便に連続して搭乗し、午後7時45分に天草空港に戻る行程となる。
ファンのお目当ては、同社が運用する唯一の航空機で、天草の方言で「かわいい」を意味する言葉から命名された「みぞか号」(座席数48)。仏ATR社製のプロペラ機で、イルカの親子をイメージした特徴的な青い機体だ。
天草エアは1998年、熊本県や天草市などの出資で設立された第3セクターで、2000年に天草と福岡、熊本を結ぶ路線で就航した。ただ、当初は利用が伸び悩み、集客策の一環として13年度に初めて「乗るだけ運賃」を実施。想定以上の反響があり、不定期に開催していた。コロナ禍で22年3月を最後に見送っていたが、就航25周年を記念して復活を決めた。
今回は25年1月21日~3月1日の計13日間で、1日3人まで、計39席を売り出した。価格は1人2万5000円で、燃料費高騰などを受けて前回(1万円)より大幅に引き上げたが、予約の受け付けを始めた今月11日からの1週間で、北海道から九州まで計200人以上の申し込みがあったという。今月29日までホームページで予約を受け付け、抽選で搭乗者を決定する。
今回の発表を受け、SNSなどでは「待ってました」と復活を歓迎する声が聞かれた一方、乗り継ぎの忙しさや、長い行程に「さすがに腰が痛くなりそう」と困惑する声もあるなど、航空ファンの話題になっている。
同社の川崎茂雄・営業部長は「応募の多さで我々が全国の方に愛されていると改めて実感した。すべての方に乗ってもらえないのは心苦しいが、ぜひこれを機に天草エアラインの存在を知って、天草まで来てほしい」と呼びかけている。