「皮膚の刺激」だけで「内臓の動き」が変化する…ついに科学が解明した「東洋医学の秘密」
「心身の不調は自律神経が原因かもしれない」「自律神経のバランスが乱れている」などとよく耳にします。そもそも、自律神経とはどのような神経なのでしょうか? 簡単に言えば「内臓の働きを調整している神経」。全身の臓器とつながり、身体の内部環境を守っています。自律神経に関わる歴史的な研究を辿りながら、交感神経・副交感神経の仕組みや新たに発見された「第三の自律神経」の働きまで、丁寧に解説していきます。 【写真】ついにわかった「ジムに行かなくても体力がつく」すごい方法 *本記事は『自律神経の科学 「身体が整う」とはどういうことか』を抜粋・再編集したものです。
自律神経の電気活動をみてみよう
東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)で研究していた頃の佐藤のデータをもとに、実際の交感神経の電気活動をみてみましょう。 図3-5をご覧ください。麻酔したネズミの腹部の皮膚をブラシでさすったり、ピンセットでつまんだりすると、胃の動きが一時的に抑えられます(図3-5上)。このとき、胃にいく交感神経の電気活動をみると、図3-5下のように活発になっているのがわかります。一方、胃にいく副交感神経(迷走神経といいます)の電気活動に変化は認められません。したがって腹部の皮膚刺激で胃の動きが抑えられるのは、交感神経の働きによると考えられるわけです。 次に麻酔したネズミの前足や後足の皮膚を刺激してみましょう。今度は胃の動きが活発になります(図3-5上)。このときは胃の交感神経活動は変化せず、胃の副交感神経の活動が活発になっています(図3-5下)。つまり前足や後足の刺激で胃が動くようになるのは、副交感神経の働きによると考えられるのです。 麻酔したネズミのデータなので、すべてがそのままヒトに当てはまるわけではないでしょう。とはいえ、このように実際に内臓の動きとそのときの自律神経の電気活動の両方をみれば、内臓の機能と自律神経の関係がわかります。 なお、ネズミに麻酔をかけているのは、ネズミに痛みを感じさせない目的もありますが、痛みなどによる情動の影響を取り除く目的もあります。つまりここでの反射は、痛みや撫でられて気持ちよくなることによって起きているわけではありません。皮膚圧反射のように、皮膚への刺激というただそれだけのことが、無意識のうちに内臓の働きを変えてしまっているのです。