【バスケ】シーズン“75試合”を戦った千葉ジェッツ・富樫勇樹 Bリーグで最も長くプレーした男が語った2冠の誇らしさと敗退の「責任」
戦いながら成長したシーズン「胸を張って帰りたい」
最後はチームにとって「悔しい結果」(富樫)となったが、千葉ジェッツにとって今季は実り多きシーズンとなったことは間違いない。 序盤戦こそ苦しんだが、シーズン途中にゼイビア・クックスが加入し、年が明けると原修太ら主力が復帰。さらに小川麻斗や金近廉ら若手も成長を遂げると、連勝街道をひた走った。極め付きは昨季ベスト5とシックスマン賞に輝いたクリストファー・スミスが3月に復帰を果たし、同月に行われたEASLのファイナル4と天皇杯決勝を圧巻の強さで優勝して2冠を獲得した。 ホーム&アウェーで海外移動もあるEASLを含め、タフな日程をこなしながらこれだけの成績を残したことは賞賛に値する。だからこそ、富樫も柔らかい笑みを浮かべ、胸を張る。 「Bリーグが始まってからの8シーズンを考えても、本当にタフなシーズンだったと思います。ただ若手も含め、シーズン当初からしたらかなりの成長を遂げ、やりきったなと思います。天皇杯、EASLと二つのチャンピオンシップを取れたことは、シーズンを通してしっかりと仕事をした結果。胸を張って帰りたいです」
コートに立つことに対する強い「プライド」
富樫個人を取って見ても、平均スタッツのランキングで得点が6位、アシスト数は5位。プレータイムでは、相変わらずの“鉄人”ぶりが伺えるシーズンとなった。 セミファイナル第3戦は、富樫にとって今シーズンの“75試合目”。レギュラーシーズン(RS)とCSを合わせた66試合で全てコートに立ったBリーグに加え、並行して開催されたEASLは7試合、準決勝から千葉Jが姿を見せた天皇杯は2試合に出場した。欠場したのはEASL予選リーグの1試合のみ。昨年10月にBリーグが開幕して以降の話であり、8カ月弱の間の試合数であるため、ほぼ3日に1日は試合をしている計算だ。 プレータイムを見ると、さらに凄い。 BリーグRSの総出場時間の合計は1923分39秒で4位(1位はニック・ケイの2004分54秒)だが、CSの200分52秒を合わせた2124分31秒はリーグトップ。ファイナルに進出した琉球と広島ドラゴンフライズはまだ試合が残っているが、仮に3戦までもつれ込んで誰かが120分間をフル出場したとしても、どの選手も富樫の総出場時間には届かない。つまり、Bリーグだけを見ても今季最も長くプレーした選手なのである。 ジョン・パトリックHCも富樫の活躍に賞賛を送り、そのプレーぶりに舌を巻く。 「勇樹がいつも責任を持って、いつも活躍する。いつも相手のディフェンスが勇樹を止めようする作戦をとるけど、ビッグショットをたくさん入れる。勇樹がどこか痛くても全試合出てたのは、素晴らしいリーダーシップだと思う」 167cmの小さな体のどこに、ここまでの強大なエナジーが潜んでいるのかは分からないが、精神面からくる部分も大きいようだ。以下は、試合に出ることに対することだわり聞かれた際の答えである。 「そこに対しては、自分の中ではかなりプライドを持ってやってるところがあるかなと。もしかしたら悪化するかもしれない怪我がある時もありましたが、可能性として少しでも出られるなら、常にコートに立つようにしてきました。それがチームにとって良かった時と、もしかしたら良くなかった時とはあるかもしれないですけど、一人の選手としてコートに立ち続けることは目標ではあるので、これからも続けていきたいなと思います」 30歳を迎え、ベテランの域に入っている富樫。しかし、プレーのパフォーマンスやメンタル面の強さは、まだまだ衰えを知らない。リーグの顔役の一人として、来シーズン以降もまばゆい輝きを放ってくれそうだ。
長嶺 真輝