古本店に「被災本」続々 液状化被害の高岡・伏木 自宅の解体控え「捨てられない」
能登半島地震で甚大な液状化被害に遭った高岡市伏木地区の古本店に、公費解体前の後片付けで出てきた「被災本」が続々と集まっている。持ち込みや買い取り予約が相次ぎ、段ボールに入ったままで整理が追いつかない状況だ。店は地震で旧店舗が損壊したが、地域の助けもあって4月に移転開業した。店主は地域への感謝を胸に依頼に応じようと思い出の品々を引き受けている。 【写真】液状化で傾いたスタジオ内に残された大量の本=高岡市伏木錦町 店は伏木湊町の「なるや」で、伏木古国府の国宝勝興寺の参道近くから移転した。店主の堀田晶さん(50)によると、本が持ち込まれる回数は月1、2回だったが、現在は週1、2回となり、量も増えた。自宅の公費解体を考える依頼者が目立ち、家単位での本の買い取り予約が4件入っている。 高岡市では7月に公費による解体工事が本格化する。地震で傾いた伏木錦町の熊谷写真館も公費解体を希望している。高齢の店主大黒幸雄さん(96)に代わり、長女の青森吾子さん(63)=埼玉県=が店舗兼自宅の後片付けを進めている。 青森さんによると、店内には写真関連の画集をはじめ、小説、歴史本など500冊以上が残る。伏木に関する本は地元の図書館や小学校に寄贈したものの、それでも大量の本が残り、なるやに連絡した。青森さんは「父も母も妹もみんな読書が好きで捨てることに抵抗がある。値段が付かなくても良いので誰かの手に渡ってほしい」と願った。 堀田さんは生活困窮者の自立支援を行うNPO法人で相談員も務め、店は「話せる古本屋」として親しまれてきた。今後も持ち込まれる本が増えると見通し「本棚を増やして対応する。利用者の困りごとも聞き、支援につながる情報を提供したい」と話した。