夫が仕事を休むことまで必要? “人が足りない”中小企業では難しい? 「男性育休」大企業で取得率46.2%に…今後の課題は
■なぜ夫が仕事を休む必要があるのか?
小室氏らによると、産後女性の死因の一位は自殺で、ホルモン量の変化で「産後うつ」になることが背景にあるということです。産後うつのピークは産後2週間から1か月頃で、うつ状態を回避するには、十分睡眠をとる必要があるが、出産後は授乳などで昼も夜も寝ることができず、悩む女性が多い。 「夫が、なぜ仕事を休むことまで必要なのか」という問いに、小室さんは「翌日仕事がある夫に夜中に起きて赤ちゃんの世話などをしてもらうのは難しい。では、夫は別室に寝る、ということになり、そうなると妻が夜中にどれだけ大変なのかますますわからなくなってしまう」と指摘。 さらには、第1子が生まれたあと、男性の家事・育児時間が増えるほど第2子以降が生まれているとのデータがあり、育休をきっかけにした男性の家事・育児時間増加が出生率の向上に寄与すると説明しました。 こうしたことから、政府は、少子化対策の一環として男性の育休取得率を2025年度に50%、2030年度に85%にすることを目指すとの方針を示しています。
■「誰が休んでも回る組織になっているか」全体の長時間労働是正こそ“鍵”
中小企業では、人が足りず、男性育休推進は難しいのでは、と思われがちですが、小室氏は「中小企業の中で(男性育休推進に取り組む企業とそうでない企業で)二極化している」と指摘。経営戦略だとして、これに取り組む中小企業もあり、その際、重要なのは、育児中の人への支援・保護を増やすのではなく、職場全体の働き方を変えること、つまり「誰が休んでも回る組織になっているか」だといいます。 「こうした組織は、コロナや今後の大介護時代でも必要になる。誰かが休んだら、部品ひとつできないというのは大きなリスク」と指摘しました。 そして、長時間労働の現状を変えるためには、労働基準法を改正して、時間外や休日に働く際の賃金の割増率を欧米のように高めることや、終業から次の勤務開始まで一定の時間をあける「勤務間インターバル」などで社会全体の働き方を変え、誰もが働きやすい環境を、と提言しました。