「プーチン独裁」はもはや新次元の領域へ突入…ロシア政府にもあきらめムードが漂う「クレイジーな男」の実態
プーチンが頼りにする「3人の助言者」
では、プーチン大統領は何を考えているのでしょうか。あるいは誰の影響を受けているのでしょうか。彼がNATOの拡大に対抗するため、国家を防衛する意思で戦争を始めたのか、それとも「偉大なロシアを復活させる」という個人的な野望に基づいて戦争を始めたのか、究極的な真実は分かりません。 プーチンと数十年来の知り合いで、メディア企業のトップで大富豪のユーリー・コバルチェクが「かつての偉大なロシアを復活させ、ピョートル大帝のようになるべきだ」とプーチンを煽り立てたとも言われています。 コバルチェクはメディアを通じた世論誘導などで大きな役割を果たしたと見られていますが、決して表には出てきません。 もっとも、プーチンに影響を与える人物は、今後も決して表に出てくることはないようです。なぜなら、彼らは既に死んでいるからです。 プーチン政権の中枢にいるはずのセルゲイ・ラブロフ外相も、ウクライナ戦争の具体的な計画は、直前まで知らされませんでした。つまり彼は大統領の本当の助言者ではありません。 一方で、彼はウクライナ戦争の開戦直後、ある財閥トップから「なぜ大統領はこんな戦争を始めたんだ?」と聞かれたようです。するとラブロフは「プーチン大統領には三人の助言者がいる。イヴァン雷帝と、ピョートル大帝と、エカテリーナ女王だ」と答えたと報じられています。三人とも既に死んでいる歴史上の人物です。 これはプーチンが、ロシアの偉大な歴史を築いた歴代の皇帝と自分を重ねていることを示すエピソードですが、彼はますますこうした少数の“助言者”に頼り、クレムリン宮殿の中で自分のからにこもる状態だという指摘もあります。 ある元ロシア政府高官は、こんな戦争は終わらせるべきだという意見に対し「クレイジーな男を説得できるとでもいうのか?」と言い放ったとされ、ロシア政府内にある諦めムードも漏れ聞こえてきます。もちろんクレイジーな男とはプーチン大統領を指します。 * * * 元ロシア政府高官が「クレイジーな男」と呼んだプーチン大統領は侵略戦争を遂行し、今のところ権力の維持に成功しています。なぜ大多数のロシア国民はプーチンを支持するのでしょうか。詳しくは後編記事〈ロシア国民がいまだにプーチンを支持する「本当の理由」…「クレイジーな男」が熟知する《大衆の不安》とは?〉で解説します。
豊島 晋作(テレビ東京WBSメインキャスター)