地元の味覚が楽しめる“役所メシの旅” ──武蔵野市「武蔵野地粉うどん」
市によると、近年は収益性で勝る海外産小麦に押されて、市内で小麦を生産する農家はなくなった。2008年に、武蔵野商工会議所が主体となって、地元産小麦粉によるうどんを復活させる「うどんプロジェクト」がスタート。現在は、趣旨に賛同した農家1軒が市内で小麦を生産している。さくらごはんで提供される武蔵野地粉うどんには、この農家が生産した小麦から作った小麦粉を3%、埼玉県産小麦粉97%を使用したうどんが使われている。 武蔵野地粉うどんを使ったメニューは、2014年4月に、さくらごはんが開店した当初から登場した。 さくらごはんの以前には、別の民間会社が食堂を運営していたが、コンビニエンスストアや宅配弁当との競争で運営難に陥り撤退。市は、障害者就労支援の一環として複数の飲食店を運営する社会福祉法人武蔵野に、次の食堂運営をゆだねた。
コンビニや宅配弁当に負けないためにはどうすれば良いのか。「早くて安い、という普通の食堂ではやっていけません。今までの概念をくずして、こだわりのあるレストランを目指すことにしたのです」と小川さんは振り返る。開店以来、地域や友好都市の食材を採用するとともに、それらを生かしたメニューを開発、提供してきた。友好都市関係では過去、庄内豚の他、千葉県南房総市の刺身、長野県安曇野市のイワナやヤマメなどを採用している。 特色あるメニュー開発の最初の取り組みが、武蔵野地粉うどんだった。小川さんは、「うどんは武蔵野市の郷土料理。うちなりにアレンジして目玉にしたいと考え、採用しました」と語る。目下、1日に20食から多い日には35食ほど注文があるという。「うどんにしては少し多い方だと思います。固定客が多いですね」。 市の文化と歴史、地域と友好都市の味覚、市食堂の現状そして挑戦 ── さくらごはんの「肉汁武蔵野うどん」には、それらが1つのトレイの上に同居しており、多重な味わいを生み出している。 さくらごはんは平日午前11時~午後3時営業で、定休日は土日祝日。武蔵野市役所へは、中央線三鷹駅北口から徒歩25分。また、同三鷹・吉祥寺駅および西武新宿線武蔵関・西武柳沢駅からそれぞれバスが利用できる。 (取材・文:具志堅浩二)