「細く長く」伴走型支援を 能登地震を語り継ぐ【山口】
県社協の大倉福恵さん、2度の派遣
石川県は8月26日、公費解体対象家屋について、当初の想定数2万2499棟を上回る3万2410棟を見込むと発表。解体率は同19日時点で約10%にとどまるなど、再建への道のりはまだまだ険しい。同14~20日に輪島市門前町へ派遣された県社会福祉協議会の事務局次長で災害福祉支援センター長の大倉福恵さん(53)に現地の状況を聞いた。 被災地への派遣は2度目。1度目は3月に民間の福祉専門職でつくる災害派遣福祉チーム(DWAT)に同行し、金沢市内にある1・5次避難所で活動した。そのため大きな被害があった奥能登の実情に触れるのは初めてだった。 同町は被災後、地盤が4㍍隆起した黒島漁港や甚大な被害に遭った総持寺祖院などが大きく報じられた。大倉さんは2011年に東日本大震災の被災地を支援した経験を踏まえ、復興が遅れていると感じたという。「言い過ぎかもしれないが、多くの家屋が崩れたままで、家の近くに水道が来ているのに水を屋内に引きこめないなど、半年以上がたった門前町の状況は、東日本大震災から1カ月後の東北と同じレベル」と振り返る。
戸別訪問で生活状況を把握
主な活動は、地域内の家庭を戸別訪問し、生活再建に必要なことの把握。一日平均10軒を訪れ、体調や生活状況を聞いた。輪島市社協の職員から「被災地が忘れられつつあり、写真を撮って現状を伝えてほしい」と訴えられたことも胸に残り、シャッターを切りながら回ったという。 07年の能登半島地震で被災し、今回の地震で再び家を失い、途方に暮れる高齢者が多かった。公費解体後、新築するのか離れるのか、将来への不安を口にしていたという。困っていると伝えることをはばかっている様子も印象的だった。「死んだ人、もっと苦しんでいる人がいるのに、自分のつらさを伝えていいものかとためらいがあったのでは」とその心中に思いを巡らせる。 東北では、被災後1年以上たってからつらさや苦しみを伝えられるようになった人々がいたことを踏まえ「支援は細く長く続ける必要がある」と指摘。具体的なことを丁寧に聞くだけでなく、精神的なケアも合わせた伴走型支援が重要だと強調する。 山口からできる支援として、義援金や寄付金、実情を知ろうと努めることに加え、被災者の体験を今後の防災に生かすことを挙げた。「県内でも南海トラフ地震に関する注意が発令されたが、来るべき災害へ対策をしていくことも支援の一つだ」と力を込めた。