<下剋上で頂へ―’24センバツ・中央学院>第1部・出場までの道/1 県予選で敗北、敗者復活へ意識新た /千葉
◇「三つのモラル」掲げ 「甲子園に出たい。もっと、ちゃんとしよう」 2023年8月23日。県大会予選・代表決定戦で四街道に敗れた直後、主将の中村研心(2年)は学校のグラウンドに戻ってからのミーティングで、こう訴えた。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 四街道戦は、四回表に相手の送球ミスで1点を先制するも、五回裏に死球や失策で逆転された。守備も打撃も課題だらけだったが、「本来できることができていない」という根本的な問題が浮き彫りになった。予選での敗戦だが、その場で涙を流す選手もいなかった。中村は「関東大会優勝を目指していたのに、悔しさより、情けなかった」と振り返る。 チームや野球への思いを語る中村に、部員たちは心を動かされた。この日先発した臼井夕馬(同)は責任を感じていた。決して配球は悪くなかったが、野手が守りやすい環境を作ることができなかったと感じた。 同7月に新チームがスタートしたものの、まとまりはいまいちだったという。選手個々の主張が強く、練習中に声を出さなかったり、走塁を全力でしなかったりするなど、野球に向き合う姿勢がきちんとしているとは言い難い状況だった。部員で問題を指摘することはなく、改善する雰囲気もなかった。 しかし、休養日だった四街道戦翌日は、グラウンドには朝から部員が集まってきた。練習をしようと示し合わせたわけではないが、「今、何をすべきか」を考えると、グラウンドに足が向かったという。その日から練習に向き合う姿勢には緊張感が出て、明らかに四街道戦前までとは異なっていた。 相馬幸樹監督は、チームを良い方向に持っていくには行動指針が必要と考えた。休み明け、「走姿顕心(そうしけんしん)(心は走る姿に表れる)」「堅守足攻(堅く守って足で攻める)」「NEVER GIVE UP(諦めない)」の「三つのモラル」を部員に伝えた。うち二つは走ることに関する言葉。「今年は走力のある選手がそろっていますから。足は日本一になれる」と期待を込める。 予選敗北から11日後には、敗者復活戦の代表決定戦があった。対戦相手の光英VERITASには勢いがあった。一方で中央学院ベンチも活気であふれていた。ベンチにいた臼井と捕手の飯山成夢(2年)が中心となって仲間に声を掛け続けていた。 プレーでも積極的な姿勢が目立った。水嶋悠(同)は3回出塁して、4盗塁を決めた。宮内優吏(同)は、新チームとして公式戦初となる柵越え本塁打を放った。走塁も打撃も全力で、結果は9―2で勝利。「気持ちは結果につながる」。中村は確信した。【林帆南】=つづく ◇ 第96回選抜高校野球大会出場を決めた中央学院。予選敗北という苦汁をなめたが、秋季県大会を通じて成長し、甲子園への切符をつかんだ。そんなチームの軌跡を追った。 ……………………………………………………………………………………………………… ▽県大会予選代表決定戦(23年8月23日) 中央学院 000100000=1 四街道 00003010×=4 ▽県大会予選敗者復活戦代表決定戦(23年9月3日) 光英VERITAS 10000100=2 05120001=9 中央学院 (八回コールド)