水道料金、平均48%値上げの可能性も 単一自治体での経営難航 人口減少で収入減
単一自治体による水道事業経営が曲がり角を迎えている。人口が減少し料金収入が右肩下がりとなれば、水道管の耐震化の費用も確保できなくなる。将来の水道料金の値上げ率が全国平均で48%に上るとの民間推計も。国は経営効率化に向け、自治体の枠を超えた広域連携を推進するが、収益力や人的資源の格差解消が課題だ。 【データで見る】水道料金は2046年度までに平均48%値上げの可能性 分析対象の96%にあたる1199の水道事業者が、2046(令和28)年度までに水道料金を値上げする必要があり、値上げ率の平均は48%と推計される-。会計監査を提供する「EY Japan」(東京)と一般社団法人「水の安全保障戦略機構」(同)は4月24日、こうした内容の研究報告書を発表した。 研究では、令和3年度水道統計などのデータに将来の人口増減率を加味し、事業者が赤字経営にならないための値上げの率と時期を推計した。 報告書によると、分析対象の1243事業者の約6割が値上げ率「30%以上」となり、全体の約4割が2026(令和8)年度までに値上げする必要があるとした。 報告書では高い値上げ率の事業者が多い地域として、北海道と中国、四国が挙げられている。渇水や南海トラフ巨大地震に備える香川県は平成20年から、経営効率化に向けた広域連携の協議を開始。30年に島嶼(とうしょ)部の直島町を除く8市8町と県との水道事業を統合した。財務システムの統一化や人員配置などで規模のメリットを生かし、水道料金のコンビニ払いなどを導入。県の担当者は「県民は水に対する意識が高く、広域連携の議論は早くから行われてきた」と話す。 大阪では22年に大阪広域水道企業団が設立され、府内43市町村のうち、藤井寺市など14市町村と府の水道経営を一体化。今月14日には新たに岸和田市など5市との事業統合に向けて協議するが、大阪市と堺市は加わっておらず、府内で人口が3番目に多い東大阪市の議会では3月に統合計画案が否決された。東大阪市の担当者は「府内平均よりも安い水道料金が統合で高くなる可能性があり、反対意見が強かった」と語る。 自治体間には収益力だけでなく、水道管更新のノウハウを持つ人的資源などでも格差があり、国は地域の事情に合わせた多様な広域連携を求めている。(山本考志)