【カスタム車紹介】MCジェンマ GPZ900R(カワサキ GPZ900R)ピボット位置変更で乗りやすさを増す“JCG-N”フレーム
フレーム加工でイージーさを、エンジンで自在感を増す
GPZ900R/ニンジャを現代化するというアプローチ。多くの手法が確立されているが、車体側では前後に現代標準の17インチラジアルタイヤを履くことが最大の目的と言っていいだろう。特性やブランドでタイヤが選びやすいし、常に新しいものがある。そのためにニンジャを17インチ向けディメンションにする。ステアリングステム変更によるフォークオフセット/トレール量の適正化や車体姿勢の適正セッティングはもはや当然のメニューとなっている。 【写真はこちら】MCジェンマがカスタムした「GPZ900R」の全体 ここにMCジェンマは、「JCG-N」というフレーム加工サービスを送り出している。このJCG-Nこそがこの車両の大きな特徴なので、先に細かく紹介しておこう。元々同店・石田さんは’11年のショップオープン以前から、自身が納得できる乗りやすい仕様のニンジャを作ろうと試行錯誤を重ねていた。車体側で言えばフォークオフセットはもとより、キャスター角の立ち/寝かせにスイングアームピボット位置変更、補強のプラスマイナスにまで及んでいた。 そんな中でケイファクトリーの加工フレーム仕様車(ピボット位置が15mm下げられていた)に試乗する機会があり、これに乗ったところ、好感触を得た。そこでケイファクトリーとMCジェンマが共同でこのシャシーを煮詰め、’21年にJCG-Nフレーム加工サービスが始まった。 フレームの、純正より20mm下げた位置にピボットホールを開け直し、17インチ最適化を図る。ケイファクトリー製ライディングステップはピボット位置が可変なので、これに無理なくフィットする。フロント側(いわゆる耳の部分)はエンジンマウントボルト穴を貫通させてカラーを入れ、表裏から締めて安定性を増す。これにケイファクトリー製ダウンチューブを併用することで剛性を高め、路面からのインフォメーションを増すとともに耐クラック性も高められる。 リヤサスのリンクはケイファクトリー製が使える設定で、さらにフレーム加工のオプションとしてリヤショック位置の変更も行える。これによってショックの選択幅も広がり、ニンジャ用の設定がないオーリンズTTXも他機種用をセットして合わせることすらできてしまう。 目的とする乗りやすさは、石田さんによれば「現代スポーツバイクに近い感じです」ということで、一人乗りで詰めていった結果の各部数値、車体の沈み込みも今のスーパースポーツ/スポーツモデルに近くなっていると続けてくれる。そうなると先のショック選択幅拡大も理に適うし、発展性も持たされていると分かってくる。 ぱっと跨がって、ぱっと乗れるような身近さがぐっと増している。それは確かに現代17インチモデル的だ。加えるなら、JCG-Nではハンドルやステップといった、ライダーの触れる部分はアジャストできるものを使う。これも特徴で、体調や体格、気持ち、場合によっては装備というライダー側の変化に合わせられるように。それが乗りやすさと合わさって、長く楽しめることになる。供給はフレームの単体でなく、ローリングシャシーでとなる(コンプリート、またはエンジンのみを別途用意する形ということ)。 「この車両はJCG-Nのデモ車だったんです。皆さんに乗ってもらったインプレを雑誌などで見たお客さんが“複数の第三者がいいと評価している安心もあるので、この車両がほしい”とおっしゃられて、販売したものです。フレームはまさにJCG-N。エンジンはニンジャヘッドのハイパワーバージョンで、1108cc仕様です。パワーよりも加速重視でトルクを出す方向にしていて、高速で6速にしていてもシフト操作なしにスロットル操作でコントロールできる。“乗りやすい、おじさんのスポーツネイキッド”的な作りになっています」と石田さん。 つまり、JGC-Nというフレーム加工で車体側にイージーさが作り込まれ、そこに長年のエンジンチューニングで得たノウハウのうちのひとつを施した大トルクエンジンを組み合わせることで、いい意味での楽な操作感=自在感を加えた。そんな見本ということだ。その見本そのものを手に入れるというオーナーさんの考えと実行力にも、注目しておきたい。
ヘリテイジ&レジェンズ編集部