予測不能なトランプ新政権! バイデン外交との違いが示す米中対立の次なる展開とは
対中外交と企業への影響
トランプ新政権が今月発足する。トランプ氏は秋の大統領選挙で、選挙人と票数でハリス氏を上回り、同時に行われた連邦議会選挙でも共和党が上院と下院で過半数を占めた。この結果、2期目の政権運営は政治的に非常に有利な状況となっている。 【画像】マジ!? これが「自衛官の年収」です! グラフで見る 2年後に中間選挙が控えているため、トランプ氏は議会で多数派を維持するために一定の支持を意識するだろうが、忠実な人物を周囲に置いていることから、1期目以上にトランプ色が強くなるとの予測もある。バイデン政権から再びトランプ政権に戻ることに対して、企業の中には関税政策など、トランプ外交の行方を懸念する声も多いだろう。では、バイデン政権とトランプ新政権の対中政策、特に企業のビジネスに影響を与える貿易政策には、どのような違いがあるのだろうか。 まず、バイデン大統領は人権や自由、法の支配、民主主義といった価値観を重視しているのに対し、トランプ氏はこれらの価値観にはあまり重点を置かず、むしろ商取引的な観点から、他国から譲歩や利益を引き出すディール外交を基本としている。この点が両者の大きな違いとされる。しかし、対中姿勢に関しては基本的に大きな違いはない。 トランプ氏は「米国第一主義」を掲げ、対中関税を強化したが、バイデン大統領も中国による経済的威圧を問題視しており、サプライチェーンの強化や経済安全保障の観点から中国に対応する姿勢を明確にしている。そのため、バイデン大統領は日本や欧州などの同盟国との協力を強化し、中国に対抗するという点では、両者には共通のアプローチが見られる。
米国の多国間戦略
具体的な対中貿易政策には、二国間化と多国間化というふたつの異なる傾向が見られる。トランプ氏は1期目の政権で、膨らむ米国の対中貿易赤字を是正するため、2018年から中国製品に最大25%の関税を段階的に課した。総額は約3700億ドル相当にのぼり、中国も農産物や液化天然ガスなど米国製品に報復関税を課したため、米中間の貿易摩擦は激化した。この政策は、同盟国と協力する形ではなく、米国が単独で中国に対抗するもので、米中貿易対立を二国間の問題として扱う姿勢が鮮明だった。 一方、バイデン政権は独自に中国への規制を強化しつつも、同盟国を巻き込む形で多国間の枠組みを構築する方針を取った。特に先端半導体をめぐる競争がその典型例だ。バイデン政権は2022年10月、中国がAIやスーパーコンピューターなどで軍事的に活用するリスクを抑えるため、先端半導体や関連技術、専門家の輸出を規制する措置を強化した。しかし、これを米国だけで行うことは不十分と判断し、日本やオランダなど先端半導体製造装置の主要国に協力を要請。2023年1月には、これらの国々と足並みを揃える形で規制強化を進めた。 日本は2023年7月、14nm幅以下の先端半導体に必要な製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に新たに加えた。しかし、バイデン政権は、両国の半導体関連企業が中国に過去に販売した製造装置の修理や予備部品の販売を続けていることなど自らの求める規制水準に至っていないとして、さらなる厳しい規制を要求した。 そして、バイデン政権は2024年4月、オランダに対して同国の半導体製造装置大手ASMLが中国企業に販売した装置の保守点検や修理サービスを停止するよう要請し、オランダは9月、ASMLの2種類のDUV液浸露光装置に対する輸出許可要件を拡大し、中国向けの輸出規制を強化した。バイデン政権は韓国やドイツなど他の同盟国にも対中輸出規制で同調を呼び掛けており、米中貿易対立の多国間化が鮮明となった。