高杉真宙が作り上げた「最高の弟」…まひろを紫式部にしたもう一人の男・惟規を振り返る【光る君へ】
善意だけを塗り固めたような惟規、演じた高杉に称賛の声多数
そして現在のまひろの家庭環境は、賢子が絶賛反抗中という、かつてのまひろと為時の関係がペーストされたような状態。ここでも助けの手を差し伸べたのは惟規だ。まひろとの最後の会話で、為時のときのように、賢子ともきっとうまくいくと言ってまひろの心を解きほぐした。そこまではわかる。しかしまさかみずからの死をもって、まひろの人間的な面を賢子に見せることで、2人の絆をつなぎとめるだなんて、とんでもないきっかけを作ってくれたもんだ惟規は! というか脚本の大石静は!! SNSでも「光る君への癒やしがあああああ」「このドラマの良心であり2024年最高の弟」「バカバカ史実のバカ」などの惜しむ声でタイムラインが埋まる事態に。物事を深く暗く考え込む、コミュ障気味の姉をフォローするかのように、道化となって姉を明るく励ましつづけた藤原惟規。もし彼が変わり者の姉を否定するような人物だったら、まひろはさらに自己肯定感の低い人間になって、才能を開花させることができなかったかもしれない。 収録後のインタビューで高杉は、惟規について「人に愛されて生きていたキャラクターだった」と語っていた。周りの人からの愛をめいっぱい吸収し、それを「愛ってなに?」と思い悩むまひろに対して、模範解答のように注ぎ込む役割を果たした惟規。そんな善意だけを塗り固めたような、まひろとは対極的なところで浮世離れした人物を見事に体現した高杉には、改めて惜しみない拍手を送りたいし、次はダークな役を大河で見てみたいとも思っている。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。10月20日放送の第40回「君を置きて」では、一条天皇(塩野瑛久)が体調を崩したために、次期王位をめぐる動きが活発化していくところと、中宮・彰子(見上愛)と道長の対立が描かれる。 文/吉永美和子