百貨店好調も「いずれ訪日客需要に陰りが出る」 伊藤忠系婦人服のレリアン社長
コロナ禍で「ライブコマース」に
新型コロナ禍の際はどのように乗り切ったのでしょうか。 とにかく「低重心経営」を心がけていました。無駄な経費は使わず、攻める時は攻めるという戦略です。伊藤忠で言うところの稼ぐ、コストを削る、損失を防ぐの「か・け・ふ」を徹底しました。 ちょうど百貨店が閉まっていた時期の20年度、21年度は業績がかなり厳しかった。「じゃあ、どうやって売るんだ」ということになり、そこで「遠隔で商品を売る方法を考えよう」と。生配信動画で商品を販売する「ライブコマース」を始めました。東京・世田谷にあった前の本社で会議室を自前のスタジオにした上で、社員が商品を試着して「こういう服なんですよ」「いくらですよ」と説明しました。洋服以外の商材にもチャレンジしました。今でも販売していますが、おせち料理なんかは好評をいただいています。 インバウンドによる百貨店の好況はこのまま続くのでしょうか。 石田氏:為替が今後どのように推移するかは分かりませんが、もし円高に振れる状況になれば、インバウンドの需要はスローダウンするでしょう。いずれは陰りが出てくると思っているんですよ。そうなった時、百貨店はどこでリカバリーしていくのでしょうか。もともと彼らがもうかっていた分野って婦人服なんです。そこにいずれは回帰するだろうと。個人的な見立てですけどね。 例えば、これからますます長生きする時代に入りますよね。健康な50~60代の女性がたくさんいる中で、この人たちはどこで服を買うんでしょうか。買うところがあまりないと思うんですよね。だからそういう時に百貨店だと。じゃないと洋服難民がたくさん出てきてしまうと思います。 将来を見据え、レリアンはどのような手を打っていますか。 石田氏:顧客層が高齢化している部分がかなりネガティブに捉えられていると思います。そこで既存のお客様は大切にしながらも、商品全体の1~2割は60代という少し若い世代に刺さるようなものを入れるようにしました。この60代の方はマインド的に40代の感覚を持っていらっしゃいますが、その方々向けに「ザ・ウーマン」というラインアップを立ち上げました。 百貨店としっかり組んで新しい顧客層を広げていきたいと考えています。百貨店の空きスペースでポップアップをやらせてもらうほか、外商と組んだ新しい売り方も検討しています。新しいお客様に「レリアンはこういうことをやっているんだ」と知ってもらう。興味を持って店に来てもらえれば、我々は接客能力には自信があるので「またここで買おうか」という気になってくれる人が5人に1人、10人に1人でもいたらありがたいなと。 この業界では、ブランドの若返りを成功させたという事例はほぼないといわれています。ただ僕はできると思っているんですよ。商品を極端に若返らせようとするからできないのであって、少しずつやればできるはずです。あまり極端に進めると既存のお客様にそっぽを向かれてしまうので、あくまで変化は少しずつです。うまくいったら伸ばしていきます。